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策略 side:月詠 奏夜
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朝、騒がしさに目がさめる。
「おい、何があった?」
慌ただしく動き回る下っ端に声をかける。
「あっ、若頭様。えっと、島田さんの囲ってた子が殺されたそうで。その島田さんが大変お怒りで、その処理に慌ただしくなってます」
昨日の今日で殺したのか?
有能?いや、そんなレベルじゃない。
医務室へ行けば昨日同様に手錠を嵌められた瀬尾が寝ている。
昨日、俺の部屋にこの手錠を外して這って来てそのまま殺したのか?
手錠で繋がれてるコイツを誰が疑う?いや、疑われないだろう。立ち上がることさえ困難な瀬尾が殺したなんて誰も思いはしないだろう。
俺はそのまま医務室を出て、島田の所に向かう途中、アイツに会う。
「良いところに居た。お前、昨日本家で怪しい輩は見なかったか?鉄が殺された。島田が使い物にならん。冷静さに欠けている。島田はしばらく別邸で休ませる」
「お前は瀬尾を連れてしばらくマンションにでもいろ。慌ただしい時に、お前の面倒まで見れん」
アイツはそう言い去った。
医務室に行けば車椅子に乗せられた瀬尾が居た。車椅子に手錠で固定されている。
瀬尾はニコニコしながら、まるで褒めてとでも言いたげにこっちを見ている。
マンションに瀬尾を連れて帰る。
本家を出て周りに誰も居ないことを確かめ俺は確認する。
「お前がしたのか?」
「勿論、ご主人様の望みだから。これで信じてくれた?」
「ああ、信じた。そしてお前が有能な事も理解した」
使い方を間違えば瀬尾は危険だが、ちゃんと使えば最強の協力者になるだろう。
マンションに着き、鍵を開ける。
すぐに違和感に気づく。
誰かがこのマンションに俺の居ないうちに侵入している。
「ポチ!?」
俺は慌ててポチを昨日寝かせたベットに駆け寄るがポチの姿は見えない。
「あれ?ご主人様、ポチ君に逃げられちゃった?」
「違う!ポチは動けない、誰かが攫ったとしか思えない」
「でも、誰が、何のために?」
「分からないが、探す」
「どうやって?島田さんは鉄くん殺されて頼りにならないし、組長さんもご主人様のペット探しなんてするより島田さんの方が優先だろうし」
自分の無力さを感じる。
結局は組を頼らないければペット1人守れない自分に嫌気がさす。
「でも、ポチ君は生きてる可能性があるからまだいいよね。島田さんのは殺されちゃったんだよ?大切な人を」
その時始めて気づく。
俺の不用意な発言がもたらす結果を。
成功しても失敗してもどうでもいい?
そんな軽い気持ちで、島田から奪った。
「ねぇ、ご主人様に教えてあげる。今回はさ、殺してって言った相手が僕だったから良いけど、不本意な発言は避けるべき。貴方を利用しようとしてる奴は沢山いる」
唆され、利用される。
「貴方の行動で、組の存続にさえ関わる」
瀬尾の言葉が刺さる。
「ポチ君は組長が預かってるよ。鉄君も生きてる」
「どういう意味だ!?」
「言葉のまんまだよ、貴方が余計な事しでかす前にどうなるか教えてあげただけ」
俺が馬鹿なことすれば、ポチなんて簡単に奪えると……そういう事か。
「まあ、鉄君も島田さんにベッタリだっからお仕置きついでに本家には出入り禁止ってことで片付けるけど」
「ポチ返せ。もう、馬鹿なことは考えない。俺が無力なのは分かった。お前らに従う。それで良いだろ?」
「ポチ君は返して貰えないんじゃない?だって、貴方のした事は変わらないから」
瀬尾の胸ぐらを掴み思いっきり殴る。
昨日とは違い、手錠で車椅子に固定されている瀬尾はもろに受ける。
「守りたいなら、責任持って動きなよ。それに、貴方は甘い。簡単に僕に騙された。否、島田さんの策に踊らされた」
殴られても恐れる事もなく瀬尾は淡々と告げる。
「お前何考えてんだ?お前だって足撃たれて散々犯されて。それで島田の策だと?」
感情に任せて殴りつける。
ポチと遊んでる時と違い加減も無ければ俺の心が満たされる事もない本当の暴力を力の限りふるう。
「僕は幸夜さえ守れればそれでいい。危険分子は取り除くのに手段なんてどうでもいい」
「瀬尾、お前死ね」
力の限り首を絞める。
「奏夜さん、そこまでです。瀬尾から離れなさい」
島田の声に反応する。
瀬尾なんてどうでも良いと放り出す。
「ポチを返せ」
「全く、何処までもお子様で困ります。佐柳はこちらで預かります。週に一度面会を許してもいいですが、奏夜さんの働き次第です。それでごねるなら、佐柳はこちらで処分します。昨日の定例会の光景覚えてますか?瀬尾だからあれだけ耐えてましたが、あそこに佐柳を連れて行けばどうなるでしょうか?」
ポチにあんなの耐えれる筈がない。
俺以外からの暴力にポチは耐えれる訳がない。
「やめろ、それでいい。週一でいい。だから、ポチをあそこに連れて行くな」
「まあ良いでしょう。瀬尾、ご苦労です。吉野に迎えに来るように言っています。足が治るまで吉野に甘えなさい」
「約束は?」
「嗚呼、そうでした。でも、残念ながら、任務は80%です。私は言った筈です。ベストはそのまま奏夜さんの懐に潜り込む事だと。バラすのが早すぎです」
「……っ、そんな」
「また、チャンスはあげます。その時まで従順にいなさい。そもそも、瀬尾は挑発しすぎです。不必要な怪我でして」
そう言うと容赦なく瀬尾の足を島田は踏みつける。
「島田さん、離してください。瀬尾さん大丈夫ですか?」
迎えにきた吉野が瀬尾に駆け寄る。
「瀬尾さん、怒ってますから。しばらくお家で監禁コース覚悟してください。あと、島田さん、今回の事は流石に説明いただきたいです」
「瀬尾、飲みなさい。貴方がこれから先の話は聞く必要ありません」
そう言って島田は投げつけるように瀬尾に錠剤を渡す。
瀬尾は大人しくそれを飲み込み目を閉じる。
「吉野、手錠の鍵です。そこのベットに寝かせてあげなさい」
吉野が瀬尾の手錠を外してからベットに運ぶ。
「奏夜さん、貴方も聞いておきなさい。今回の真相を」
説明されなくっても大体は分かっている。全部仕組まれていたという事だ。
「まず、昨日の定例会についてです。定例会で偶にあのような見せしめを行うのは事実です。そして、瀬尾のおいたが過ぎたのも事実ですが、瀬尾には定例会直前にある話を持ちかけました。そもそも、瀬尾のおいたの原因は幸夜さんに会いに気持ちに我慢できなくなっていた事です。なら、チャンスをあげようと」
「瀬尾さんは何をしたんですか?最近は大人しく俺のいう事も良く聞いていましたが」
「幸夜さんの部屋のオートロックのハッキングです。そもそもどうやって瀬尾はあのマンションを調べたかも不思議ですが。そのせいで先日は幸夜さんの家出騒動です」
「……監視不足です、すみませんでした」
「ちょうど、その時、奏夜さんの行動も目に余る所があったので、瀬尾には奏夜さんの懐に潜り込むか、奏夜さんのおいたを炙り出すかすれば幸夜さんに合わせてあげるという条件で定例会で近づいてもらいました。成功しても会わせる気などありませんが、希望を与えておくのはコマを動かす為には必要です。正直、瀬尾を侮ってました。あの異様な空間は初めてでした」
「いくらなんでも、やり過ぎです。瀬尾さんボロボロじゃないですか」
「瀬尾を生かしている理由の1つですから、本人が納得してるなら問題ない筈です。そもそも、早く吉野が瀬尾を繋ぎとめれば問題ないんです」
その言葉に吉野が黙る。
「奏夜さん、貴方を許しません。鉄に牙を向けたことを後悔なさい。佐柳は賢い。貴方の為と言えば6日眠れない日を過ごそうとも1日の逢瀬で満足できる」
そんなわけない。
ポチが耐えれる?
そうは思わない。
「まぁ、実際はそう簡単にはいきませんでした。とりあえず、佐柳には傷が治ればまた一緒に住めると言っています。どうせ、貴方の事ですから治りかけては怪我をさせる」
島田の声が遠く聞こえる。
「さあ、奏夜さん、貴方次第で佐柳に会えます。瀬尾と違って貴方の場合は可能性がある。心を入れ替えて頑張りなさい」
島田に結局は踊らされた。
アイツには敵わないと見せつけられて、アイツらの管理下に成り下がる。
それでも、俺はポチに会える週一の為に従順に受け入れる。
to be continued
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