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魔女の家に行っていることは、他の誰にも内緒だ。どうせたしなめられるか、変な目で見られるかのどっちかだろう。インターネットで探しても、あの家にまつわる情報はなく、事件や怪奇は、ただの根も葉もない噂だと分かった。でも、それだけで噂の全部が嘘だと信じたわけじゃない。
ヒヤさんは確かにお菓子を作るし、きっと男の子が好きってのも、本当だ。直接は合わない視線。俺がそっぽを向いているときには、痛いくらいに感じる。服の下まで見透かされそうな、強い力。不自然なほど、俺に触れるのを避ける。この前、初めて触れたヒヤさんの手は、少し冷たかった。
「はるきー、パスこっちー!」
「あーい!」
名前を呼ばれた方向へ、勢いよくサッカーボールを蹴り飛ばす。体育の授業は嫌いだったけど、こっちへ越してきてから、俺が本当に嫌いだったのは、偉そうにのさばる部活連中や、女子の視線ばかり気にしてしまう風潮だと気付いた。
「あーも、遠藤マジ強い」
「なー」
うまくパスを回しあえたけど、あっさりゴールキーパーの遠藤に止められた。わりと本気で悔しがってる自分がいる。勝てないな。どうやったら勝てるかな。考えるのも楽しい。
「なあなあ、はるき、魔女の家って知ってる?」
授業が終わったあとで、ゆたかが俺に言った。わざわざ小声なのは、なんでだろう。もしかして、俺があそこに出入りするのを、見られたとか?
「…………知ってるけど」
「あれの隣にさあ、墓地があんじゃん?」
「うん?」
「今度みんなで肝試し行こうかって計画してんだ」
「…………」
なんだそっちか。ほっとする。
「……でも肝試しって、夜やるんでしょ。うちは無理だよ。弟もいるし」
お父さんの帰りも遅い。弟を、家にひとりにはしておけない。
「だーいじょーぶ、そこらへんはちゃんと考えてあるって。弟も来たら? 他にも小さい子、来るし」
「うーん、行きたい…………けど、とりあえず親に聞いてからだなあ」
「そっかあ」
行きたい。肝試しなんて、したことないし。怖そうだし、面白そうだ。お父さん、許してくれるかなあ。勉強の成績も、こっちじゃ良い方だし、必死に頼んだら聞いてくれないかな。
「ま、俺らは毎年やってっから、ちょい慣れっこなんだけどさ。りょーちんが今年は隣の魔女の家も探検するって言ってんだよねえ」
「えっ」
「あいつ言い出したら聞かないじゃん?」
「……でもあそこ、人住んでるって」
「ヤバそうだったら引き返すよ。でも面白そうじゃん?」
「うーん……」
面白いかなあ。ヒヤさん、どう思うだろう。いやがりそう。ていうか、不法侵入。
とりあえず親に相談してみる、と濁して、その日は放課後、まっすぐに魔女の家へとむかった。
みんなを止められるだろうか。
新入りの俺が?
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