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「寝てれば?」
弟は、顔を横にふった。
「行ける? けっこう歩くかもよ?」
今度はしかめっつらのまま、うなずく。
説法は七時ぐらいに終わって、九時の就寝までは自由時間だ。その間に、何人かで肝試しをすることになっていた。
昼間も遊び回ったし、見るからにくたくたで、眠そうだ。それでもまだ遊びたい弟を連れて、境内の端に集まった。
「あれ、りょーちんは?」
「トイレ」
「ちなとりおんも、もうすぐ来るって」
「おー、それ弟?」
「ちっこい」
「小学生?」
「名前は? なんてーの?」
大きいお兄さん達に注目されて、弟は俺の腰に隠れた。ちゃんと自分で喋れよ。こづくと、小さなか細い声で、ふゆき、と呟いた。頭を撫でてやる。
「へー! はるきにふゆきか。兄弟っぽい」
「つか兄弟だし」
「たつんとこもそうじゃん」
「いいなー、兄弟。うらやま」
「あれ、かずってひとりっこ?」
「うち姉ちゃんだもん。うぜえの」
大人はいないのか。真っ暗な中を、キョロキョロ見回す。懐中電灯は眩しすぎて、チカチカする。むこうで高校生が三人ほど、楽しそうに話していた。眼鏡の真面目そうな人、体育会系っぽい体の大きな人、そして一番派手なのが、りょーちんのお兄さんだ。顔がはっきり見えなくてもそれだと分かるのは、一際大きな声で笑っているからだった。舌足らずの甘ったるい声は、一度聞いたらすぐ覚えてしまう。
「いやいや! そんなん俺やってせんわ、やばいこいつ!」
「ほうかあ。やるやろ?」
「ミソノ、真面目すぎて狂ったんか」
背中をとん、と小突かれて、振り向く前にりょーちんがにっこり笑顔を俺に見せた。
「ビビってる?」
「…………おばけより虫のが嫌だ」
これだから都会っ子はー! 兄にも負けぬ大きな声でりょーちんは嘆いた。うるさいなあ。蚊もセミもバッタも、嫌いだよ。気持ち悪いもん。ウザいし。
りょーちんの声に気付いた彼の兄が、ぞんざいな言葉をこちらに放る。
「るせーよガキ」
「てめーもガキだろバーカ」
「ああ?」
「聞っこえないんですかー。日本語わっかるー?」
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