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『13』
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約半年後ーーーー
「はる。……やっぱ、行かないか?」
「うん。……行かない」
桜も散った土曜。お父さんは車に乗る前、俺に質問した。お母さんのところへは、まだ行けない。だって行き先は病院じゃなくて、お墓なのかもしれない。受け入れられない。
弟と同じように、俺は、お母さんが病院で治療を受け続けていると信じたい。
車は滑るように走り去り、見送ったあと、家の中に入る。洗濯はとうに終わった。あとは食器の片付けと、拭き掃除くらいだ。
「お兄ちゃん、まだー?」
出かける準備を終えたふゆが、リビングで待っていた。俺が食器を洗う間に、ワイパーでフローリングを拭いてもらう。
「忘れもん、ない?」
「ない!」
元気いっぱいに、弟は答える。家の鍵を閉めて、いつもの道を歩いていく。
日差しはあたたかい。
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