アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
②
-
嫌でも鼻をかいくぐるその香り。
俺みたいな人種とは無縁の代物。
そう。
タバコだ…(はいココ涙声ね)
タバコ=ヤンキー
タバコとヤンキーはワンセット。
タバコのある場所=ヤンキーのいる場所。
すなわち。
一番奥の締め切られた個室には熊がい・る。
オゥマィゴォォォー!!
ヤンキーに絡まれるのと後から竹内にグチグチ言われるのとどっちを取るかなんて考えなくとも答えは既に出ている。
さぁ、帰ろう。
熊が姿を現す前に!
息を殺しながら踵を返した。
と同時にカチャリと個室の鍵が開く。
ハイ死んだ。
絶対死んだ、これから死ぬ、絶対死ぬ。
ダメもとで倒れた。
「……………」
「………………………………………………」
は、早く行けよこのウスノロバカが!
顔見てませんから。
俺チクったりなんか絶対にしませんから。
安心してお帰り下さい。
「おい」
「ヒッ…………っ…………………………………」
ちょ、ヒッとか言うなよ!
何だよヒッて!!!
生きてんのバレバレじゃん。
つかいきなり話しかけるとかやめて下さいよ。
ルール違反もいいとこです。
汗の水溜まりができようかという程に全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出している。
綺麗なトイレで良かった、なんてタイルに張り付く頬の安否を気にしていれば。
「立てよ」
「…………………………………」
殺す、なんていう言葉が鼓膜を揺さぶった。
もうダメだ。
とりあえず目だけは閉じていようか。
顔は見てませんから許して下さいと懇願する為に。
のっそりと上半身を立てた。
俯いて、ぎゅうっと制服を握り締める。
蹴られるのか、それとも殴られるのか。
はっきり言って俺の頭の中にあるヤンキーには、挨拶代わりにこのどちらかを相手に施すという少々間違った認識が根付いている。
瞼をしっかり下ろし、歯もくいしばってみる。
さぁどこからでもかかってきやがれ!
日頃の筋トレの成果、見せてやるぜ。
俺は屈しない!
熊なんかに屈してたまるかバカヤロー!!
「おい」
「すみません何も見てません、本当に何も知りませんしさっき倒れた時に全ての記憶が飛びましたハイ」
「目、開けろ」
「俺盲目なんですよ、すみません」
「開けろ」
「ハイ、でも何も見えませんよ、本当に見えないんです」
観念して目を開けた。
もちろん目線はタイルに張り付けて。
しかし俺は見てしまった。
相手の顔をはっきりと。
そして更なる死の予感を感じたのだった。
「クラスと名前、言え」
「すみません、あの、さっきも言った通り記憶がー」
ガン…っ。
聞こえるより早く見えたその鉄拳。
イライラしているのは目に見えていて。
へこんだ掃除用具箱を真横に、俺はマジで意識を飛ばしていた。
→
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 301