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チキンだけに
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多分俺だけなんじゃないかな。
意識を取り戻しても目を開けないなんて言う人間離れした特技を持ってるヤツは。
普通は目を開けてから覚醒した事に気づくからね。
でも俺は違うんだ。
ヘタレ故、安全を確認してから目を開ける。
意識がないままの方が救われるという場面てあるわけだからさ。
うん。
まさに今この瞬間のように。
「ついに殺人てか」
「知らね。それボコったら倒れた」
「物を大切に」
「どうすんのそれ」
「は、弁償しろって?」
「それじゃねーよ、ソッチ」
「ああ、コイツ」
「保健室くれー連れてってやれよ」
「今の時間あそこ行きたくねぇし」
「あー、ハルか」
く、く、熊が増えてる…。
何でだよ!!
何で仲間なんて呼ぶんだよ!
熊って単独行動なんじゃねーの!?
何で二匹も増えてんだぁあ!!
しかも俺トイレに倒れたまんまとか。
誰かも言ってたように気絶したんだから保健室くらいさぁ。
「てかコイツ起きてね?」
「起きてません」
「……………」
「……………」
「……………」
「………………………………………………………………………」
ハイ今度こそ死んだ。
絶対死んだ。
10000000%死んだ。
「起きろ」
「………ハイ」
ああ情けない、目から大量に汗が。
泣けば多少なりとも許してもらえるかもなんて子供染みた発想がなんとも俺らしい。
観念して正座した。
するとすかさず離れた場所にいたさっきの熊が近付いてくる。
このバカ高を取り仕切ってるという二年の浅間拳聖が。
えぇ、よりによってヤンキー軍団の神ですよ。
熊改めボスザルだ。
「クラスと名前」
「…い、いぢのびー…むど、むどうゆうずげ…っ」
「………」
「………」
「………」
これから俺はボスザルの言いなりにされるんだ。
毎日毎日呼び出されては人間サンドバッグにされて、イライラしてる時には半殺しにされて、献上金を作る為に学校にも行けなくなり、寂れた人生を送る日々…。
うぅっ…、嫌だ…。
「ユウスケ、でいいのか」
「…うっぅ…っ、ふぁい…」
「泣きすぎ」
「ずびまぜ…っ」
人生の幕が降りようかという瞬間に泣かないヤツなんていないだろう。
絶望を感じて号泣しない人間なんかいねーよ…。
ああママン!
せっかく与えて頂いたこの命も、俺の不注意で他人様に握られてしまいました。
申し訳ない。
「浅間、そいつどうすんの」
「おもしれーし、明日からパシらせる?」
ヒィッ…やっぱり!!
「さぁ、どうしてやろうかな。とりあえず食う」
くっ!?
「おおぉおいしくありませんよぼくみたいなひ弱なもやし野郎!!にに肉もついてないし骨ばっかだしっそれからあの髪もごわごわだし不細工だしチビだしなんも取り柄ないしビビりでヘタレでチキンでってとと鶏じゃないですよ臆病って意味のチキンで美味しいって意味じゃありませ―」
むにゅ。
……………………。
……むにゅ?
「よく動く口だな」
ちちちち、近いっ、かかか顔が!!
目前まで迫る端正なボスザルの顔。
この人を知ってたのはだからでもあるんだ。
ヤンキーのくせにちょー男前。
うらやまーなんて遠くから見てたら友達に教えられた。
浅間拳聖、うちのボスザルだって。
まぁそんな重複した説明はどうでもいい。
ど う で も い い ん だ
さっきのむにゅ…の正体を、いや、正体はもう分かっている。
その意味をっ…、意味うおぉおお────!!!
お、俺のっ、俺のっ…、ファーストキッス…!!
「あ」
「あ」
「悪くねぇな」
二度目の気絶。
意識がなくなるその瞬間、今度は微かに音を拾う。
―ハルに電話。保健室空けろってゆっとけ。
ああ今度は運んでくれるんだ。
「そこで食う」
オワッタ。
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