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勝負①
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今度はさっきみたいに状況を把握してから覚醒するなんて悠長な事ぬかしてられなかった。
気を失う寸前雪山での遭難者のように必死で意識を呼び戻そうと頑張ったがダメだった。
墜ちたら終わりだぞ、と漠然とではあるが危険を察知していた俺はそれでも意識を手放してしまった。
だから覚醒しかかった瞬間瞼を開けるより先に何かを振り払うように両手足をバタバタと振り回したんだ。
「………お前、カエルか何か連れてきたの」
「あ?」
「ベッドでひっくり返って暴れてますけど」
「…………」
遅れて開かれた視界の端に二つの影を確認できた。
一人はボスザル。
もう一人は知らない人。
てか多分ボスザルの部下か仲間。
人数はさっきより減ってはいるものの、危機的状況は何ら変わってはいないらしい。
とりあえず恥ずかしいのでバタバタさせていた両手足を静かにシーツ内に納めた。
「あ、大人しくなった」
「ハル」
「いーじゃん減るもんじゃねーし。お前が人間拾ってくるって初めてだからさー」
意味深な言葉と近づいてくる気配。
何故だか咄嗟に目を閉じていた。
視覚の変わりに今度は嗅覚が働き始める。
キツイ匂い、だけど嫌な香りではなかった。
「ゆーすっけくん、とりあえず起きてよ」
「………で、でも、」
貴方がどんな人種の人間かまだ把握できてないのにそんな安易に目は合わせられません。
ぎゅっと瞼に力を込める。
「つか、普通。本当に普通。別段やる気も起きないほどに普通」
普通、ですか…。
それは俺の容姿を言ってるんですよね?
やる気とは多分アレの事をさしてるんですよね?
ああ、良かった。
この人はまとものようだ。
「お前には普通に見えるのか」
「ごめんぶっちゃけ普通以下」
ごめんなさいね、普通以下で。
そんな貴方はさぞかし容姿端麗なんでしょうな。
くそ、ムカついてきた。
上から降ってくる無遠慮な本音。
喰ってかかるのはまず無理なんで、その面を拝んでやろうとうっすら目を開けてみた。
「…………まぶしい」
「あ、しゃべった」
まぶしい、と思わず口から盛れてしまう程にその容姿は完璧なものだった。
ボスザルとはまたタイプが違うな。
他人を普通以下と易々判断してしまうのも無理はない。
失礼だがな。
「拳聖はブス専だもんなー、何でも醜いものが好きだよな、お前」
「見た目が醜いから何だ。見た目がいいからうめぇとは限らねぇだろが」
「そうかな。俺は外見が全てだからわかんね」
ボスザル…、ちょっと見直したぞ。
このハルってやつは嫌だ。
嫌いな人種。
「まいーや。俺帰るから楽しんでちょ」
バイバーイと声と気配が遠ざかってゆく。
や、ちょ、待ってよ、ねぇ…、
二人きりにさせんなよおぉぉぉー!!!
く、喰うって言ったんだぞアイツは俺を喰うって…っ!
シーツを頭までスッポリかぶった。
どうせなら極上にしろよな、俺みたいなんのどこがいいんだ。
女みたいとか言われた事もなければそっち系の男に誘われた事もない。
そんな普通以下の男よりはもっと可愛いらしい男とかいやいや男じゃなくて普通は女ですよねー女ですよ普通はあぁ!!!
ガタ…、と椅子が音を立てた。
来る、来る…っ。
ちょ、待ってくれ、抵抗したって敵うわけないんだ。
ボスザルにまだ乳を吸ってるような子ザルが敵うわけないんだよ。
イコールだから素直に掘られましょう(ニッコリ)。
じゃねぇー!!
ニッコリとかしてんなよ俺!
大丈夫か俺!!
「おい」
「じゃ、じゃんけんしましょうよ!!」
「は」
シーツに手をかけられ思わず叫んだ。
そうさ平等にいこうじゃないか。
じゃんけんなら勝てる可能性だってある!
「じゃんけん?」
「お、ぼ、僕が勝ったら帰らせて下さい」
「…俺が勝ったら?」
「と、当初の目的をまっとうされて下さい」
「大人しく従うのか」
「……………はぃ」
ニヤリと笑った顔がシーツの向こうに見えた気がした。
こうなったら勝つしかない!
何が何でも勝つしかっ!!
勝負は一回。
三回と言いかけた言葉も即座に却下された。
くそう…。
起き上がり体制を整える。
やっぱりボスザルの口許は少しだけ笑いを含んでいるみたいだった。
「さ、最初はぐーからで、お、お願いします…」
拳を握りしめる。
さぁ、いざ、
尋常に勝負!!
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