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お友達を紹介します①
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あの告白ならぬ脅迫から一夜明けた。
言うまでもなく俺の目の下には立派なクマができていた。
頭はいつもに増してボーっとしてその機能をほぼ放棄している。
だから登校中何度もいたる所にゴンゴン体をぶつけた。
「おはよ」
「…………はよ」
教室に入ると、珍しく真弓が先に席に座っていた。
真弓。
クラスでの俺のお友達。
真弓って名前みたいだけど実は名字で、名前は剛。
まゆみ ごう
このミスマッチな組み合わせ、親のセンスを疑う…。
最後にぶつけた頭をスリスリしながら、俺は真弓の後ろの席に腰を下ろした。
「ユースケ」
「………んー」
「席、担任に話して許可もらったけど」
「……席?」
机の上に乗せていた頭を僅かに持ち上げ、前にいる真弓に視線を送る。
「黒板、見にくいだろ」
「あー、別にへーきだよ」
「せっかく許可もらったから、変わろう」
「いーのに…」
この男はクラス内でもぬりかべと呼ばれる程無駄に背が高い。
会う人会う人にバレー、もしくはバスケかなんかやってんのか聞かれるらしい(俺もその中の1人なんだけどな)。
軽く185はあるそんな男が前にいては、黒板も見辛いのが正直なところ。
俺なんか167というドちびな身長だし?
けどメリットもあるわけで、その壁が俺の居眠りを先生の目からきっちりガードしてくれる時も多々ある。
だから変わるのはちょっと惜しい。
「ほら、交代」
「…本当にいーのに」
「俺が気を遣うからやなんだよ」
「わかったわかった」
見た目ツンツンして無愛想で強面なこの男。
しかし顔は悪くないというかイケてる部類に入ると思う。
でも中身は真面目で繊細で必要以上に周りに気を遣いすぎるとこがあり、しかも尚且、俺と同類だったりするんだ。
そう、こいつも隠れチキン(ぷっ)。
最初は近寄るのも見るのも俺のノミの心臓にかなりの負担を与えたもんだが、この男の本性を知ったその日からそれもなくなり、俺達はよく一緒にいるようになった。
というか、気の合うヤツは真弓くらい。
あとはほら、アッチ寄りのヤツばっかだから。
悪いヤツらではないんだけどな、苦手なんだよ。
ガタガタと席を移動した後、目の前に広がる見慣れないその景色に少しだけ落ち着かない、そわそわした感じがした。
教室ってこんな広かったんだな…。
てかもう居眠りできねぇ。
後ろを振り返り、やっぱり変わるのはなしにしようかと口を開きかけたところで室内の空気が一変した。
「な、なに…?」
ざわざわうるさかった雑音が綺麗に消える。
ビックリした俺は小声で真弓に耳打ちした。
「あそこ、例の先輩」
必要以上にビクつくチキンな俺に、同類とはいえ流石の真弓も少々呆れ気味。
そう言いながら、軽く前の戸口を指した。
「例の先輩?」
呟きながらその方向を見る。
瞬間。
「!!!!!」
ひぃぃっ……………!!!
視界に入ったその影に、危うく悲鳴をあげそうになった。
ぼ、ぼぼぼぼぼぼっ…ボスザル…!!(号泣)
何で?ねぇ何で?
反則だろそれは?
こっちの陣地に来るとか反則じゃないんですか?
涙をこらえ、少しでもその視界にうつらないようにとそうっと頭を下げたその時。
「ユースケ」
ボスザルは遠慮なく俺の名前を大きな声で口にした。
そして涙が溢れる。
観念して恐る恐る目を合わせた。
「昼休み、屋上な」
「…………」
ホワッツ?
え?え?
な に ゆ え ?
な ぜ に ?
これは昨日と同じパターンではないか。
なんなんだ、なんなんですか貴方は。
1ヶ月後の約束なんじゃないんですか。
その間に俺は転校でもしようかと作戦を練っていたのに台無しじゃないですか。
しかも屋上て、屋上て…。
もろおたくら不良のテリトリーじゃないっすか。
てかボスザルとその取り巻きしか入れない場所じゃないっすか。
何でそんな場所に呼び出すんすか。
もしかして俺をノーと言えない日本人にさせるつもりでは…(いやいや既に俺はノーと言えない人間だから)。
「祐介?」
ボスザルが消えた後、その場にある目という目は全て俺に。
静寂が保たれたその空気の中、次の瞬間俺は全力疾走でトイレに逃走していた。
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