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⑤
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「そっちのちびはこっちおいで。浅間が待ってる」
「え…」
「待たせるなって言ってんの」
「はい!!武藤祐介いきます!」
ビシッと右手を上げ、とにかくこの場から逃げようと俺は親友を見殺しにした。
すまない真弓…っ!
俺は自分が一番可愛い生き物なんだ。
野犬共に睨まれながらも己を奮い立たせスタスタと歩を進める。
歩を進める。
右足を出す。
右足を、出す。
右足を…………。
「行かせない」
やっぱりか!!
お前か熱血漢め!!
離せよコンチクショウ!!
ガッチリ掴まれた右腕。
いくら振りほどこうとしても一向に緩む気配はない真弓の手。
助けを求めた。
「は、離してくれないんですけど…」
もはやどっちが敵かわらない。
「困った坊やだねぇ。そんなにボスに会いたかったら、俺の相手していきなよ」
「行きます、今すぐ行きますからちょっと待っててくださ―お、わっ」
ぐいっと掴まれた腕を勢いよく引っ張られ、俺は真弓の後ろへと倒れ込んだ。
な、なにすんだ!
とキツく見上げた前には広い背中。
ああ、何て素敵なシチュエーション。
女なら惚れてる。
「アンタみたいなオトコオンナ、あんまり殴りたくないけど」
なんて呑気にうっとりしている間に更に状況悪化。
オトコオンナと言われて、相手の顔から表情が消えた。
ななななんて事を言うんだ!
明らかに逆鱗に触れたぞお前!!
「言うねぇ、ちょっと、黙って貰おうか」
それは綺麗な線だった。
綺麗に弧を描いていた。
瞬間的に真弓の左側に現れたその長い美脚。
そのままいけば真弓の顔を直撃するはずだった。
「美人だと、褒めたつもりだったんですけど」
「口数の減らない男だな」
その足首をしっかり右手で掴みながら、真弓は今更敬語を使っていた。
違う違う、説明するとこおかしい。
「コレを止めたのも、お前で2人目だよ」
「足癖悪いと、モテませんよ」
話が噛み合ってない。
目の前に広がる非現実的映像をただただポカンと、それこそテレビでも見ているかのように傍観する。
そしていよいよ本格的格闘が始まろうとする中、また辺りがざわめき出した。
「ハル、何やってんだ」
お待ちかねのボスザル登場。
助かった…。
「んー、別に。ちょっと遊んでただけ」
体制を整え、ハルと呼ばれた美形さんはそう言って大きくため息を吐いた。
「やっとお出ましか」
収集がつくかと思うも、またも熱血漢が邪魔をする。
お前、もういいよ…。
「誰、コイツ」
「お前の愛しいお姫様のナイトくん」
「ナイト?」
整ったボスザルの顔が、みるみる険しくなっていく。
ああもうやめて…。
「あああの、俺の友達です!友達!」
「ユースケ、いたのか」
「はいいましたずっといましたさっきから」
待たせたなんて誤解をまずは解かなければ。
真弓の後ろから飛び出るも、またも、またも…っ。
「お前はそこにいろ。俺が話をつける」
真弓がぶっ壊した。
もうお前が死ねや。
「なにお前」
「こんな弱い子犬同然の祐介を、獰猛なライオンのアンタがリンチなんかすればどうなるかわかるだろう」
「リンチ?」
「こんな魔の巣窟に呼び出して、祐介を一体どうするつもりだ」
ああ真弓。
死ねとか嘘だよ嘘に決まってんじゃん。
ありがとう…。
弱い子犬は余計だけど。
「何か勘違いしてねぇか」
「してない」
うわ、言い切ったよ。
してるくせに言い切った。
「俺は今からソイツと飯食うんだよ」
飯?
え、そうなの?
「まずはお友達から、ってコイツが言うから」
「基本でしょ」
コイツと言われてハルさんが大きく欠伸をした。
どうやら落ち着いたらしい。
良かった…。
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