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いわゆる世間は狭いというやつで①
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どうやって帰ったのか記憶になかった。
気が付けば部屋のドアを開ける自分がいて、中に入るとキッチンに輝彦さん、そして俺の定位置となっていたソファには知らない誰かが座っていた。
「お帰り」
「…ただいま」
言いながら、タバコをふかす輝彦さんに目で誰だと訴えてみる。
「昼に来た男の人、って言や分かるか」
ああ、あの恐い人。
モニター越しだったからあんまり顔見えなかった。
怒鳴る人間は俺の中では恐い人と位置付けられる。
だからこの綺麗であり可愛い顔の男も、自然と俺的に苦手なタイプとなっていた。
すなわち関わりたくないってゆう。
しかしそんな訳にも行かず、取り敢えず立ったまんまもあれだから座ろうと思うも、ソファは既に取られている。
目をウロウロさせていれば男に手招きされ、俺はびくっと体が反応するのを止められなかった。
さっき輝彦さんに成り済まして騙しやがったなとかなんとか怒鳴られるんだろうか。
醜態見ちゃったしな。
輝彦さんに助けを求めるも伝わらない。
渋々牛歩で近寄った。
「ちんたら歩くな」
「ですよねすみません」
きつく突っ込まれ半泣きで隣に座った。
「お前、いつまでここにいんの」
「え…」
「バカ彦の甥だかなんだか知らねぇけどさ、お前いたらここでヤれねーんだよね」
「…やれ?」
「ぶってんじゃねぇよ、やるっつったらセックスしかねぇだろが」
せっ……………。
ああ、住む世界が違い過ぎるんですね理解しました。
「真生、少しは言い方考えろ」
まお…。
すみませんが俺の中では魔王と呼ばせて頂きますよろしくお願いします。
「祐介、悪いな。そんなんだけど根はいいヤツだから。誰に対してもストレートにしか物言えねぇんだわ」
許してやって、と輝彦さんは苦笑しながら俺にごめんのポーズを取った。
大丈夫ですよ、魔王ですから。
所詮魔王は魔王でしかないですから。
言い方とか態度とかそんな生温いもの求めませんよ魔王には。
ある意味俺の中でボスザルを超えた。
「祐介ね。不良とつるむようなタイプには見えねーけど」
いやいや、つるんでませんから。
てか輝彦さん喋んなよ。
頭のてっぺんから足の先までじろじろ俺を舐めるように見た後、魔王はそう言ってふんっと鼻を鳴らした。
「そういやまだちゃんと聞いてやってなかったな」
タバコを消した輝彦さんがそう言って魔王の隣に座る。
そしてそれと入れ替わるようにして魔王が立ち上がった。
「ビールねぇの」
流石魔王さんですね。
魔王では飽きたらずアル中ですか。
冷蔵庫を物色する姿を横目で見た後、俺は話しを進める輝彦さんに意識を移した。
「俺は兄貴と違うから。全部ちゃんと話してみ」
優しい声だった。
ちょっと涙腺が緩んだ。
だから話した。
全部。
たった一人でもいい、今ある恐怖心を知って欲しかった。
「へぇ、あのバカ高のボスがお前をねぇ」
信じられないと言いたげなその顔を見て、俺も夢ならどんなにいいかという想いをまた熱く愚痴りまくった。
「ま、気に入られたんならしょうがねぇわな」
「やっぱり諦めるしかないのかな…」
「嫌なら断れよ」
「恐いし…」
「力でモノを言わせるようなヤツなのか?」
その問いに、俺は小さく首を振った。
多分、多分だけど、ボスザルはそうじゃないと思った。
あの昼休みに、確かにそう感じた自分がいたから。
でも、恐い存在である事には変わりない。
「な、一つ聞いていいか」
「ん?」
「お前、問題視してんのヤンキーって事だけだよな」
「……。……ん?」
「だからな、相手が男だってとこ、あんま問題視してなくないかって」
「……………」
「だよな」
確かに、言われてみれば。
え、なに、つまりそれは?
「いーだろ、バイでもゲイでも」
うん?
俺が?
バイでもゲイでも?
「ちょ、待ってよ。違うし俺、うん」
確かに男だってとこはあんまり問題視してなかったけど、だからって何でそうなるんだ。
それはつまり相手が男であるって事実よりも、不良のボスって事実の方が俺にとっては遥かに重大だったってわけで。
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