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終わりは突然に①
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昨日は思いの外よく眠れた。
口振りからして泊まってくんだとばかり思っていた魔王は、夕食後用があると言って帰って行った。
それからまた輝彦さんに色々聞いてもらって、とりあえず避けられるなら極力ボスザルとの接触を避けるという対策が決まった。
そして最終手段として輝彦さんに示談してもらう事も。
逃げても何も解決しないのは分かっている。
けれど今の俺には全面対決なんて出来そうにない。
や、後の俺にもそんなん出来ないんですけどね。
「もう行くのか」
「うん。あ、鍵って持ってていーの?」
「今日からまた仕事が忙しくなるんだ。だから持ってないと夜中まで入れねぇよ」
「遅くなるってそんなに?ご飯どうしたらいんだよ」
「心配すんな。真生に頼んである」
……………………。
ひ、一人でパンの耳でもかじってる方がマシだ。
魔王の手作り料理云々ではなく、その空気がだな……。
や、魔王の手作りとかも何か爬虫類っぽいのが出そうで遠慮したいけど。
もういいや。
今ここでグダグダ言っても仕方ない。
項垂れながらいってきますと部屋を出た。
マンションから何分かかるかわからないから、早めに出て学校までの時間を計ろうと昨晩から考えていた俺は、いつもより30分早く学校に向かった。
そして欠伸をしながら改めてあの疫病神二人を呪う。
呪ってから、あの白髪大丈夫だったかなと心配した。
今思い出しても体に震えが走る。
あれが同じ人間のする事か。
恐ろしい、心の底から恐ろしい。
ブルッと身震いしたあと、俺は歩く速度を上げた。
「祐介、昨日電話出られなくて悪かったな」
教室に入ると、真弓が開口一番そう俺に告げた。
朝の挨拶を忘れる程気にしていたらしい。
だったら掛け直すくらいしたらどうなんだいって話しなんだが。
「いーよ、大した用じゃなかったし」
「そうか、本当にごめんな」
「だからいーって」
しつこく謝る真弓を見ながら、その背後に魔王の影を作り出す。
魔王と魔神。
最強過ぎて笑えた。
真弓には魔王と知り合った事は内緒にしておこうと決めている。
なんせそのいきさつを話せないからな。
実は叔父とお前の兄貴が付き合っててさー、なんて口が裂けても言えぬわ。
あーこわいこわい。
またブルッと体を震わせた。
「祐介」
「んー」
「例の先輩とはどうなんだ」
「どうって?」
別に何もありませんが。
ありたくもないんで。
「また昼誘われたら行くのか?」
「…行かないよ」
そう答えると、真弓は大袈裟な程にほうっと息を吐いた。
余程ボスザルが嫌いらしい。
まぁ、水と油みたいなもんか。
「もう関わるなよ。気に入られてるみたいだが、あんなのとは付き合わないに越した事はない」
うん、と返事をしながら、でも俺はなんだかその言葉が引っ掛かるような、変な違和感を感じた。
不良は嫌いだ。
でもそれは単に恐怖心からくるだけのものであって、不良全ての人格や人間性を全面否定するつもりはない。
野蛮なヤツもいるかも知れないけど、不良全てがそうだとは別に思っていなかった。
だから、真弓の偏見じみたその言葉を、俺は素直に聞き入れる事が出来なかった。
俺が逃げたい理由はただ一つ。
恐いから、ただそれだけ。
優しかったらいいとか、性格がまともなら大丈夫とか、そんな問題じゃないんだ。
昨日見かけたあの喧嘩。
それを当たり前のように日常として受け入れている、そんな思考自体が俺には恐くて。
震えるほど、恐くてたまらなかった。
しかし無情にもその時はやって来る。
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