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「まいーや。でさ、さっきのボスの話しなん―」
「うおおぉおー!!」
だから何で戻すんだよ!!
その話しはもうどっかいっちゃったはずだよね!?
何で戻すの?
また俺ゴキゴキとか言わなきゃいけないの?
ねぇ?
そうなの?
「今度は何だよバカ介」
二度目の俺の雄叫びに、今度は大魔王も冷ややかな目を俺に寄越した。
さてどうしようか。
またゴキブリとか言ったら殴られそうだしな。
考えに考えた挙げ句、俺は言った。
「あああの、今俺ハマッてるゲームがあって、それのボスがなかなか倒せなかったんですけど今たった今倒し方をひらめいて、はい、あの、だからゲームしていいですか」
そう捲し立てた後、しばしの沈黙。
大魔王は更に不機嫌になった模様。
ボスザルは見れないので状況不明。
「いきなり何を言うかと思えば。そもそも倒し方とかひらめくもんでもねぇし」
本当はクリア済みなんですけどね。
ここはもう仕方ない。
ゲームでなんとか盛り上がれないだろうかと試みるも、大魔王の様子を見ていると無理っぽかった。
そう肩を落としかけたその時。
「何のゲーム」
意外にもボスザルが食い付いてくれた。
けれどもしかし。
顔が見れない。
よくわからないけどダメなんだ。
目とか合わせるなんて今の俺には一億積まれても無理。
理由とかわからない。
とにかく俺はボスザルを見る事ができなかった。
「や、あの、えっと…、ち、チキンクエストっていう、はい…」
目線は床に、俺はまた蚊の鳴くような声でそう答えた。
「何そのタイトル。今そんなん流行ってんのかよ」
大魔王がそう鼻で笑うのを横目に、俺はじっとボスザルの反応を待った。
多分知らないだろうなぁ。
結構マイナーだからあのゲーム。
「聞いた事あんな。確かゴンタがやってた記憶ある」
ゴンタ…。
ああ、ごんざぶろうさんですね。
「ご、ゴンタさん、ゲーム好きそうですもんね」
ははっ、と意味なく愛想笑い。
そして誤ってボスザルの顔を見てしまった俺は一気に背筋が凍りついた。
な、何か俺、カンに触るような事言いましたか。
険しくなるその表情。
漏れそうだった。
「お前、いつゴンタと仲良くなったんだ」
「え、あ、その…、別に仲良くとかは…」
なりたくもないです。
仲良くないし。
「俺の知らねぇとこで勝手に変な繋がり持つんじゃねぇよ」
鬼のような形相は確かに怖かったけど、それ以上に言われたその言葉に俺は何故かカチンときてしまった。
そして過ちを犯した。
「べ、別に持ってませんし持ちたくもありません。何で俺が好んで不良なんか…と、」
全て言ってしまってからハッと我に返る。
ボスザルの表情は更に険しく歪んでいた。
もう目をそらすにそらせない。
だけど、なんか、今は負けたくなかった。
理由はわからない。
とにかく引きたくないという命知らずの感情に、俺は支配されていた。
「まあまあ、ケンカすんなって。浅間くん、許してやって?ただでさえコイツボスにつきまとわれて参ってんだ」
そして大魔王がとどめを刺す。
俺の全身から一瞬で血の気が引いた。
いやもう負けでいいです、負けでいいですから今すぐ時間を戻して下さいお願いします神様。
お願いします。
お願いしますって!!
「ボス、ね。ちなみにお前の言うボスって誰だよ」
「し、知りません」
「つきまとわれてんだったら俺が何とかしてやるよ。言え、誰だ」
皮肉ったその口振りに、命の終わりを覚悟する。
つきまとわれてるとか、大魔王も何でそんな誤解を生むような言い方するんだ。
俺はそんなん一言も言ってない。
困ってたのは確かだけど。
「おい」
「も、もう解決したんで大丈夫です。はい」
「だろうな」
そう、既に解決していたのは確かだった。
だからボスザルが、そう言うのも当たり前で。
重なったままの視線が、ふっと外される。
だけど俺は、ビールをぐいっとあおるその姿から目が離せなかった。
そしてまた、じわりと涙腺が緩み始める。
傷付けた。
また俺は、この人を傷付けてしまった。
そんなつもりなんかないのに、何でこうなるんだ。
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