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「て事は、浅間くん、君は祐介が好きなんだ?」
「ひょ…っ!!!!!」
ビックリし過ぎて俺の喉から変な声が出た。
ひょって……………。
「そうか、だからか。だから祐介につきまとってたんだな。不良のアンタが祐介と友達なんて、おかしいと思ったんだ」
大魔王の核心をついた言葉に、真弓のまとうオーラが真っ黒になったのを背後に感じる。
バレた。
ボスザルが俺に求愛してたのがバレてしまった。
けれどもう、以前のような焦りは感じない。
平凡な人生を諦めた俺には、バレた事なんてもう些細な事でしかなかった。
「何とか言えよ、不良」
「……………」
真弓のその言い方に、俺は神経がゾワッと逆立つのを感じた。
真弓は確かに大事な友達だ。
俺を大事に思ってくれてるのもわかる。
だけど、その言い方はない。
仮にも先輩に対して。
ごめん真弓、ムカついた。
お前に初めてガッカリしたよ。
「祐介?」
ガタン、と勢いよく立ち上がった俺に、3人の視線が集まる。
人に、えらそうに何かを言った事なんて今まで一度もなかった俺が、今初めて言おうとしてる。
正直、心臓が壊れそうだった。
「ま、真弓も、真生さんも…、あ、謝って下さい」
「祐介?」
「何だよバカ介、さっき謝ったろ」
「違う、俺じゃなくて、あ、浅間先輩に…謝って、下さい」
立ったまま俯いて、やっと声を絞り出す。
「何で俺が謝らないといけないんだ」
そうぼやく真弓を、俺は咄嗟に睨み付けた。
そして。
「謝れって言ってんだよ!!!」
怒鳴るなんて行為を、この時初めて体験した。
そのあまりの怒声に、喉がピリピリと痛みを訴える。
普段大きな声なんて出さないから余計に、驚くように喉の奥は熱く熱を生み出していた。
「どうしたんだ、祐介」
驚いているのは俺だけじゃなく、いきなり怒鳴りつけられた真弓も面食らった顔をしている。
そして興奮のあまり肩で息をする俺に、優しい声がかかった。
「さっきからお前が俺に何を言おうとしてたのか、わかったよ」
言いながら俺の隣に歩いてくるボスザルに、俺は視線を向けた。
「言ったろ、気にすんなって」
言葉と同時にぽん、と頭に乗せられる手。
それからわしゃわしゃと、まるで子犬を愛でるように髪を掻き乱された。
また、ぎゅうっと痛くなる。
胸の真ん中が痛くて、だけどそれは、嫌な痛みなんかじゃなかった。
「それに、こんな野郎に何を言われたところで別に屁でもねぇ」
真弓を見下すように見詰めながら、ボスザルは俺の頭から手を離した。
「祐介、いくら友達であるお前の頼みでも、俺はコイツに頭は下げられない」
「別にいらねぇよ」
バチバチと、火花が散るのが見えた気がした。
真弓もボスザルも、互いを見据えたまま微動だにしない。
さっきの勢いはどこへやら、俺は一気にオロオロと慌てふためいた。
「ちょ、あの、ま、真生さん…!」
大魔王に助けを求めるも、いつの間にかビールを片手に二人を傍観している。
その、面白いと言いたげな表情に、俺は深いため息を吐いた。
「あああの、二人とも…っ、ちょ、ちょっと落ち着こうよ…、」
勇気を振り絞って二人の間に割って入るも、真弓に邪魔するなと睨まれる。
一度しっかり話をつけて置きたかったとか何とか呟いて、真弓はスッとソファから立ち上がった。
ちょ、本当に待ちなさいよ君は。
ここが人んちだってわかってるんですか。
乱闘なんか起こしてみろ、絶交してやるからな。
「俺は別に話なんかねぇな。ただ一度、しっかり躾ておきたいとは思ってた」
「アンタが俺を?笑わせんな」
もうダメだ。
大魔王は酔っぱらいでやれやれー!モードだし、俺が止めても虫を払うように弾かれるだけだし。
ていうか大魔王、アンタは諸悪の根源だ。
二人の縮まる距離に、血を見たくなかった俺はまたもぎゅっと瞼を閉じた。
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