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ある意味最悪な展開です①
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…………………。
俺に一体どうしろと。
「あ、の…」
「ん…」
「…………」
時計に目をやり、間もなく零時を回る事を確認した俺は深く息を吐いた。
あれから二人はあほみたいに酒をあおり、日本酒にとどまらずバーボンやら焼酎やらとにかく飲みまくっていた。
多分ザルとか言うんだと思うけど、見てるだけで酔いが回ってきそうな俺をよそに、二人はシラフのような状態で酒をあおり続けた。
そのうち輝彦さんがどっちが先に潰れるかとかなんとか言ってボスザルを煽り、焼酎を瓶から直飲みし始めたボスザルの成れの果てがこれ。
「お、起きれますか…?」
「ああ?」
「すみません無理ですよねすみません」
潰れて床に突っ伏すボスザルをなんとかソファまでと思うも、めちゃくちゃ睨まれ凄まれもう触らない事に決める。
輝彦さんは大魔王から電話があり、この状態をほったらかしてさっき姿を消したばかり。
俺に押し付けるな。
「てか、明日学校なんですけど…」
ああしかも俺制服のまんまじゃん。
とりあえずスウェットにでも着替えようと、当てられた部屋に入りいそいそと着替える。
制服をハンガーにかけ、それからまたリビングに戻って驚いた。
「どこだ、ここ…」
頭を抱えながら、ボスザルがソファに座りものすんごい不機嫌露にボソリと呟くのが聞こえる。
これぞ触らぬ神に祟りなし、なわけで。
再び部屋に戻ろうとしたが、それより早く声がかかって最速涙目になった。
「チビ」
「……………はい」
「あー、思い出した、お前の親戚んちか…」
手招きされ、諦めて牛歩で近寄った。
頼む、そこへ辿り着くまでに今度は朝まで眠ってくれ。
しかし祈りは届かず。
「水くれ」
「はいただいま」
低い声で唸られ、瞬足で水を用意しテーブルに置いた。
「あー、頭いてぇ…」
水を一気に飲み干すと、ボスザルはまた頭に手をやりソファにもたれる。
俺は一体どうすればと佇んでいれば、ぐいっと手を引かれソファに倒れ込んでしまった。
ふわっと、アルコールの匂いが鼻をつく。
「あ、あああの…っ」
「恐いか」
ボスザルの上に乗っかるような体勢で、背中には逞しい腕がしっかり回されている。
身動きが取れない状態の中、耳に寄せられたその口から熱い息と声がかかった。
「あの…っ」
「答えろよ」
もう、心臓はフル稼働どころではなく、備わっている動力の限界を軽々突破しそうな勢いで。
バクバクと、鼓膜の内側からその音が頭に直に響いていた。
答えろとか言われたって、わかんない。
何を聞かれたのかわかってないから。
言葉の理解という機能を手放してしまった頭は、抱きしめられてるという状況しか俺に伝えない。
黙る俺に、ボスザルはまた再度、質問を寄越した。
「俺が恐いか」
言葉と共にまた熱い息が耳にかかる。
血が全身を巡り過ぎて、俺は体中が赤くなるのを感じた。
「あ、俺…、は、」
「悪い、呼ばねぇっつったけど、呼ぶ」
「…あの」
「祐介」
更に、耳元に擦り寄せられた唇。
その柔らかい、熱い感触が俺を翻弄し、また呼ばれた名前に俺の全ては完全に停止してしまった。
「祐介、俺はお前を傷付けたりしねぇよ」
「…………」
「だから」
「……………」
「俺に飼われろ」
ドクン、と、巡っていた血が逆流した。
そして夢から覚めたように、頭の機能が再起動を始める。
気付けば、立ったままでボスザルを見下ろしている自分がいた。
「俺は…っ」
「どうした」
「俺は、捨てられた動物なんかじゃないっ」
やっぱりこの人は、履き違えていた。
慈悲を愛だと、勘違いしていた。
俺が捨てられた子犬だとでも思ってるんだろうか。
怯える俺に、震える子猫を重ねて見てたんだろうか。
多分そうなんだろうな。
でなければ、ボスザルが俺なんかに構うはずがない。
「動物?」
「あの…っ、もう寝ます…」
知るもんか、後の事なんか知るもんか。
俺は寝る。
明日も学校だ。
酔っ払いになんか構ってられない。
何も言わなくなったボスザルに背を向け、俺は部屋に駆け込んだ。
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