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【第二部・鼓動】長いものには巻かれておけ①
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太陽がこんなにも煩わしいと感じた朝はなかった。
そろそろ夏も近い。
そんな風に思わせるその照りつけは今日も一段と強く、学ランを着てきた事を通学途中早速後悔した。
寝不足なもんだから暑さも通常の倍以上俺に負担を与える。
昨日はほとんど寝られなかった。
自覚してしまった自分の気持ち。
気付いたところで別にどうなるわけでもなく、ボスザルの求愛は勘違いだと判明した今、この気持ちはお荷物以外の何者でもなかった。
恐いから関わりたくなかった。
けれどそれも今じゃ苦しくなるから関わりたくないに変わってしまった。
もう恐くはない。
恐いわけがない。
好きな人を恐いなんて、思えるわけなかった。
いつもに増してその雰囲気はガヤガヤと騒がしかった。
教室に入り、自分の席を見て俺はあれっと首を捻った。
真弓の姿が見当たらない。
そういえば昨日電話もなかった。
今まで俺より後に来た事なんてなく、登校すれば必ず真弓が先にいたから、その空席がやけに気になって仕方なかった。
しかもこれまで無遅刻無欠席だったから余計に。
体調でも悪いんだろうか。
一応メールだけでもと、俺は携帯を開いた。
それにしても煩いな。
いつもの事ではあるけど、今日は特に煩い。
構わず真弓にメールを送り、寝不足だった俺はそのまま机に突っ伏した。
考えるのは昨日の事。
もし、ボスザル自身が勘違いだと気付いてなかったら、また俺に構ってくるかも知れない。
昨日、もう関わらない的な事を昼休みに言われたけど、その後のあれでもしかしたらもしかする可能性は限りなく大に近い。
その証拠と言うべきか、昨日ボスザルは、もう呼ばないと言っていた俺の名前を口にした。
それはつまり昼休みに言った事を撤回するという意味にも取れるわけで。
そうなるとなんていうか、俺的にまた違った意味で最悪だなと、言わざるを得ないわけで。
ぐるぐるぐるぐると思考は回り続ける。
何がどうなってどうするべきなのか、ちっともまとまらなかった。
相変わらず室内はやかましい。
耐えきれなくなって耳を塞いだ。
より早く聞こえたその言葉に、俺の寝不足の頭がギクリと反応を示す。
「マジで?石塚先輩って三年だよな。マジで浅間先輩狙ってんだ」
「あれだよ、根に持ってんじゃねぇの。屋上乗っ取られた事」
「あー、もとは石塚先輩らのテリトリーだったらしいもんな」
「つか俺らが入る前に既に乗っ取られてたんだろ?今更って感じじゃね?」
「まあ、根に持ってんのかはわかんねぇし。つか年下に舐められてんのがムカつくだけなんじゃねーの」
「それも今更って感じがしね?」
「んー、まあ色々あんじゃん?よくわかんねぇけど」
三年が、狙ってる。
そういや昨日、大魔王に絡んでたヤツが言ってたな。
本当だったんだ。
寝た振りをしながら更に聞き耳を立てていれば、そこへ他の奴らも混ざり始めた。
「おい、一年もだってよ」
「あ?一年?」
「浅間先輩狙ってるって」
「マジで?うそ、誰だよ」
「さあ、そこまでは知らねぇけど」
一年にもボスザルを狙ってるヤツらがいるのか。
もしそれが本当なら、ボスザルは知ってるんだろうか。
多分間違いなく耳には入ってるだろうけど、一体どうするつもりなのか。
売られたら買う。
昨日、輝彦さんに向けて放たれた言葉。
きっと、ボスザルはその果たし状を受けるに違いない。
考えて、俺の脳裏にあの光景が鮮やかに甦った。
頭から血を流し、倒れていたゴンタさん。
もしかしたらボスザルは、もっと酷い状態で倒れる羽目になるかも知れない。
そう思うと、俺の全身がゾワッと鳥肌を立てた。
嫌だ、見たくない。
ボスザルのそんな姿、見たくない。
そんな姿になって欲しくない。
思わず閉じていた瞼にぎゅっと力を込めた。
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