アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
②
-
そんな中、俺は一人首を捻る。
二年と三年をおさえた、という事は、ボスザルは要求をのんだままになってるって意味になる。
とすれば、俺の身の安全はまだ確保されていて。
じゃあ、だったら、何で昨日ボスザルはあんなわけのわからん取引を持ち掛けてきたんだろうか。
わからない。
ボスザルは一体何を考えてるんだろうか。
最後に見せた、あの表情も気になる。
傷付いたのは俺の方なのに、何であの人まで傷付いたような顔になるんだ。
俺が何をした。
俺にどうしろと。
アンタのそんな顔、もう見たくなかったのに。
ぎゅっと、ズボンを握る。
どうせ今の時点で授業もサボってるんだ。
これが終わったら屋上に行ってみよう。
何を話したいわけでもないし、何を話せばいいのかわからないけど。
「さっきからあくびばっかしてるお前、木嶋っつったか」
そう一人で悶々と考え中、事態は動いた。
さっきの二名のうち一人が、まるで喧嘩でもおっ始めようかという形相でデコピンに食ってかかる。
やめなさいよあなた。
ここに一匹子犬が紛れ込んでる事忘れてませんか。
「確かC組の守本だったっけ、お前。尚吾に不服があるなら、俺が相手するけど」
敵意剥き出しの守本に、それでもデコピンはサタンにもたれたままで、どうでもいいようにまた一つあくびをする。
変わりにサタンが、鋭い視線で守本を見据えた。
「二年と三年おさえたっつーけど、浅間と石塚とやり合ったのかよ」
守本の隣で同じように牙を剥いていたもう一人の男が、低い声で、疑うようにそう言葉を発する。
それにサタンは軽く首を振ると、
「浅間の弱点つついただけだよ。そしたら簡単に陥落した。おまけに三年を変わりに潰してくれたしね」
サタンの楽しそうなその言葉に、二人は更に訝しげに表情を歪めた。
そして俺の頭も反応を示す。
弱点…?
「て事は、実力でおさえたわけじゃねぇんだな」
「実力ね。少なくともお前らよりはあると思ってるけど。忘れた?俺に負けちゃった事」
さも小馬鹿にしたように、サタンはそう言ってデコピンの髪を緩く撫でた。
言われた二人は、ぐっと言葉を詰まらせる。
「一クラス相手でも余裕だった俺が、尚吾には傷一つつけられなかった。わかるよね、言ってる意味」
そう言って、サタンはデコピンの髪に軽く口を押し当てる。
「お前らに俺をてなづける事、できる?」
髪から額に、その唇は下ろされていく。
デコピンはされるがままで、ついには睡眠により力の奪われた体が、ストンとサタンの膝上に落ちた。
「わかったよ、お前らが一年をまとめるのは認める。けど、このバカ高のトップっつーのには腑に落ちねぇ」
卑怯な手を使ってのしあがったようなボスは認められない、そう守本は主張した。
「三年の石塚はハナから相手にしてない。だから浅間に潰させた。その浅間も、尚吾には敵わないよ」
膝で眠るデコピンを慈しむように見詰めながら、サタンはそう吐き捨てた。
それに対して、守本の隣にいたヤツが低い声で言葉を放つ。
「だったらタイマンでも張って証明しろよ」
「タイマン?くだらない。必要ないよ」
「逃げにしか聞こえねぇな」
食い下がる二人に、サタンはデコピンから目を離すと守本に視線を移した。
「お前、G.O.Dって知ってる?」
GOD…?
サタンの口から唐突にこぼされた英単語。
何かの名前だと、俺は直感した。
問われた守本はふんっと鼻を鳴らし、答える。
「ここら一帯を纏めてるチームじゃねぇか。God of death、死神。傘下にいるチーム数はざっと50。ヤクザも下手に手を出せないデカイチームだろ」
ああまたそんな異世界事情を…。
「よく知ってるね」
「それが何だよ」
「そのチームのトップが、ここにいる尚吾だって言ったら、どうする?」
サタンのその言葉に一同は絶句した。
けど、守本だけは信じ難いというように、依然としてその態度を崩さない。
「高校生で16、7のそいつがG.O.Dのトップだ?笑わせんな。しかもトップの素性は幹部クラスの人間しか知らねぇはずだ」
そう鼻で笑い飛ばす守本に、サタンはすっと目を細めた。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 301