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「だったら、今から尚吾に招集かけてもらう?電話一本でチームの幹部が雁首揃えたら、信じるよね」
デコピンの髪を優しく撫でながら、サタンは何かを楽しむように、口の両端をきゅっと吊り上げた。
なんだか恐ろしい展開になりそうだ、と俺は一人固唾を飲む。
守本はしばらく黙ったままで、けれどまた鼻を軽く鳴らした後、サタンの提案に賛同の意を示した。
「やれよ。今すぐ」
どうせホラだ、とでも言いたげな口振りでサタンをせっつく。
そこで漸くデコピンがむくりと起き上がり、髪をガシガシと手で乱した後、あろうことかサタンに深く口付けした。
寝惚けてるんですか。
周りもぎょっと目を見開いている。
「ユウ、喋ってんなよ」
「なんだ、起きてたんだ」
「バレちまったじゃねぇか、死神のトップの素性が。こんなバカ高にいる一生徒によ」
サタンから離れると、デコピンは気だるそうにポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつけた。
そしてふっと煙を吐き出すと、守本をじっと睨みながら口を開く。
「一つ訂正しとくわ。その辺のヤクザが手を出せないのはチームが巨大だからじゃねぇ。ケツ持ちが巨大だからだ」
ケツ持ち…?
「いくらチームがデカくても、ヤクザのケツ持ちがなけりゃのさばれねぇ。所詮、族やらギャングやらなんてもんは、ガキの戯れにしか過ぎねぇからな」
その道のプロには勝てねぇ。
そう言いながら、デコピンはピンとタバコを指で弾くと、またサタンにもたれかかった。
ああもう何がなんだか俺にはさっぱりですわ。
「で、何だっけ」
眠そうにあくびをしながら、デコピンはサタンをチラリと見上げた。
「信じられないみたいだから、証明してあげればって」
「ああ、そうだった。電話か。や、来てもらうのは悪いからなぁ。アイツらも忙しいし」
「でもボスの命令は絶対でしょ」
「んー、職権乱用は好きじゃねんだ俺」
いやいや、チームのボスを職業にしないで下さい。
皆がデコピンに視線を注ぐ中、しばらくデコピンは何かを考える。
そしてサタンの肩から頭を持ち上げると、再び口を開いた。
「明日チームのミーティングがある。来るか、お前」
とんでもないその提案に、さすがの守本も無意識かと思われるように、ゆっくりその首が左右に揺れた。
「なんだよ、だったらどう証明しろって?面倒くせぇな」
「わ、わかったよ、信じる」
「だって」
デコピンはまたサタンにもたれると目を閉じ、今度こそ寝るからなと、後をサタンに任せた。
「じゃ、解散って事で」
満足そうに一人笑顔を作るサタンに、一同は動くまでにしばしの時間を要した。
あのデコピンの正体がまさかあんな恐ろしいものだったとは。
話しはよくわかんなかったけど、とんでもなく危ないヤツとだけは理解できた。
さすがのボスザルも、デコピン相手じゃ勝ち目ないか。
屋上へと続く扉を前にして、俺は何度か勇み足を踏んだ。
何を話したいわけでもない。
だけど話したい。
そんなわけのわからない気持ちに従いここまで来たはいいけど、なかなか扉を開く勇気が出ない。
ドアノブに手をかけては引っ込め、を俺は数回繰り返していた。
ええい!
モジモジしてたって始まらない。
いるかどうかわかんないけど、行こう!
意を決してドアを開けた。
ゴン、と、音がする。
まさかこれはまさかのバッドタイミングてやつですか。
手応えのあるその感覚に冷や汗が流れる。
ドアを押し開いた先には誰かがいて、多分俺のせいでデコを打ったはず。
血の気が引いた。
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