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⑤
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「別に一年後でもいい」
「な、何が―」
「二年後でも十年後でも、俺の気持ちは変わらねぇ」
お前が好きだ。
最後の言葉は、聞き取る事が出来なかった。
ふっと触れ合った唇に、俺の脳がパンクする。
それはボスザルとする三度目のキスだった。
初めてを奪われた一度目のキスも、意識を奪われた二度目のキスも、こんなに舞い上がるような気持ちになんてならなかったのに。
「舌はやめとくわ。えっちなキスもダメなんだろ?」
ああもう何も聞こえない。
全部破壊されてしまった。
沸騰した頭を、ボスザルの胸元にトンッと預ける。
そのまま、あの日のように抱き締められて。
タバコとアルコールの匂いに、胸がぎゅっと痛いくらいに軋んだ。
「俺が、女とえっちな事すんの嫌か」
熱くて低い声が、耳に寄せられる。
熱に浮かされたように、俺の目は潤んで、吐く息も熱くて。
ボスザルの胸に頬を押し当てながら、俺は言った。
「…い、いや、です…。今日、部屋に…、女の人がいるって、わかっただけで…、泣きました」
回された腕に強く力が加わるのを感じながら、俺は更に続けた。
「で、でも俺…、え、ええっちな事、するの…、自信ない、です」
もしかしたらできないかもしれない。
ボスザルとあんなことやこんなことをするなんて、未知の世界過ぎて想像もつかない。
それは許容範囲を遥かに上回る宇宙的な物事にすら感じた。
というか、えっちな事って言っても、ボスザルが俺に何を求めてるのか、正直よくわかってなかったりする。
「あ、あの、聞いてもいいですか」
「何だよ」
「え、えっちな事って、あの、何するんですか…」
もちろん、セックスってどうやるの、なんてバカみたいな事を聞いてるわけじゃない。
男同士、どうやるのかも知らないわけじゃない。
掘られる、とかよく言うし、俺もそれがどういう事を指してるのかわかってる。
でも、具体的に何をするのかがよくわかんなくて。
「祐介」
「…は、はい」
「口で説明したら、お前多分倒れんじゃねぇの」
…………………。
ど、どんな破廉恥な事をしようとしてるんですかこの人。
「じゃ、じゃあいいです。あの、しません、俺」
「は」
「えええっちな事しませんできませんムリですきっと」
「それ、ありえねぇんだけど」
「そ、そんな事言われても困ります」
「困んのは俺だ。女とヤんな、でも自分ともさせない、何それ」
……………………。
お、怒らないで下さい。
「ま、いーや。いつかお前に、えっちな事してって言わせるから」
「い、いいい言いませんよそんな事!!!」
「言わせる。つか、言いたくなるよ、お前」
「な、なりません…」
「なる、そうさせる」
「なりませんっ」
バッ、とボスザルから体を離し、真っ赤な顔で睨み付ける。
その時、やっと俺の視野が周りにも行き届いた。
「…………」
隣のボックスにはモヒカンの他に三人程座っている。ちょうどボスザルを挟んだ向こう側。
そしてカウンターには万智さんとクマさん。
それぞれの目は、綺麗にこちらに向いている。
「祐介、どした」
み、見られていた。
なんて事だ。
人目も無視して、俺はなんて破廉恥な会話を…っ。
「か、帰ります…!」
立ち上がり、ポケットの財布に手をかけた。
それをまたボスザルに掴まれて、また固いソファに戻される。
「怒んなよ」
「べ、別に、怒ってません」
「人目が気になんなら、俺んち行って続きするか」
つ、続きってなんですか続きって…!!
まるで今えっちな事してるみたいじゃないですか!!
「い、いいです、行かないです」
「祐介」
「は、い…」
「それ、素?それとも計算してんの?」
「け、計算?何ですか、計算なんてしてません」
そう真顔で返したら、ボスザルはふっと笑って。
「よく聞け。俺はマジだから、祐介にマジだ」
まるでわざと周りに聞かせるかのように、ボスザルは少しだけ声を張ってそう言った。
そして俺の腰をぐっと引き寄せ、顎をとらえる。
「お前、責任取れよ」
意味のわからない言葉を囁かれ、悪い、と言った言葉と共に、とんでもなくえっちなキスをされた。
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