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④
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次に口を開いたのはデコピンだった。
タバコを取り出し火をつけながら、大魔王が座るソファへと近付いていく。
そして大魔王の隣にドカッと腰を下ろすと、ふっと煙を吐き出した。
「アンタ、昔どっかのチームに所属してたろ」
「だねー」
「今いくつだよ」
「25」
へぇ、大魔王って結構年いってたんだ。
顔もだけど色々と様々な部分が幼いからまだ20くらいかと思ってた。
「黒蝶」
こくちょう…?
デコピンの口から出された意味のわからない言葉に、俺は一人眉を寄せる。
そんな俺とは逆に、周りはざわつき始めた。
「へぇ、知ってんだ」
「一応名前くらいはな」
顔を見合せながらぼそぼそ話をする4人に、デコピンが大きな声で話し始める。
「黒蝶っていや昔、僅か五人程度の人数でここらにのさばってたチームだ。どこぞに太いパイプもなけりゃ、ケツ持ちもいない。ピンにも関わらず、どこも潰す事ができなかった」
「ヤクザとか嫌いだったからなー皆」
「潰せなかったんじゃなくて、潰さなかった、のが正しいか」
大魔王をじっと見詰めながら、デコピンはまたふうっと煙を吐き出した。
「一応一人一人に実力もあったらしいけどな、理由はそれだけじゃねぇ」
大魔王の髪を指先でスッとなぞるデコピンの目はどこか妖しい色があり、俺はなんとなく、言わんとしている事がわかったような気がした。
「その時代のうちの頭も、あんたんとこの誰かにイカれてたのか」
「死神の頭なぁ、どうだろ。多分誰かいわしちゃってたんじゃねぇの」
「黒蝶はそうやって力のあるチームの頭を破壊して、誰も自分達に手出ししないよう仕向けてた、だよな」
「蝶ってか、寄生虫みたいだな、キモ」
大魔王がブルッと身震いする。
うーん…、大魔王様、やはりその遍歴は凄まじかったのでありますね。
口の悪さにも納得した。
「昔そんなチームがあったって聞いた時は信じ難かったけどな、実際そのチームにいたっていうアンタを見たら納得したよ」
イカれる、の意味がな。
デコピンは呟いて、大魔王の顔をズイッと覗き込んだ。
ああ、食いたい、って下品なお顔をなされてますよ。
やだやだもうこの男やだ俺。
お前はサタンとイチャコラしてろよ。
「アンタだったら別に参加してもいい、ミーティングにな」
「マジ?別に俺誰にも言わねぇから」
なんだかわけのわからないうちに話が変な方向に進んでませんか。
俺、帰りたいんですけど。
新谷さんが退室し立っていた4人も座り始め、ますます居心地が悪くなる。
お前は帰っていいという言葉を期待していたが、角で小さくなっている影の薄い俺を皆様の頭はどうやら忘却してしまったらしい。
ミーティングが始まってしまった。
「今月上に支払う金、早めに各チームから集金しとけよ」
「もう大体集まってる。後は最近傘下に入ったばっかのサソリっつーチームと、マヤんとこだけか」
「またマヤかよ、アイツんとこ毎回おせーよな。俺らが大屋のオヤジに怒られんだって話」
「マヤんとこは一番数が多いから、仕方ねぇって」
「アイツ変に慈悲深いからな。前も何人かの分テメーで建て替えてあって、シメてやった」
「それやると他のヤツらに示しつかねぇからタブーにしてあったろ」
「だからシメたって」
…………………。
もう、なにがなんだか…。
あの、帰ります、俺、ね。
いいですよね、皆様話し合いに夢中になられてますし大丈夫ですよね。
そっ…と、忍び足でドアに手をかけた。
「あ、そうだ。お前らに言っとく事あんだ」
デコピンの声を背中に、俺は小さく小さくかがみこむ。
いっそほふく前進でもしようか、なんて考えながらドアを開けた。
「近々橋北とガチンコ予定。けど、お前らは動くなよ。あくまで学校同士でケリを着けっから、仮に俺がやられても動くな」
「ケリってどうつけんだ」
「しらね、アッチの頭とタイマンとか?」
「タイマンねぇ」
僅かに開いたドアの隙間、必死でそこを通り抜けようと頑張ってみる。
「橋北の頭って誰よ。チームに関連なし?」
「多分ない」
「てか、面倒臭がり屋のお前がバカ高の頭張って尚且つ他校とガチンコとかあり得なくね」
「ユウの頼みだからしょうがねぇ」
「ユウ?何だよ、女か」
「男。えらいべっぴんでな、自由にヤらせてもらう変わりに条件飲んだ」
「お前…」
どうしようもねぇな、との声を最後に、俺は魔の空間からの脱出に成功した。
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