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⑥
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「これ、さっきのハゲにカツアゲされてたろ」
これ、と言いながら差し出されたのは金髪坊主に取られた二千円。
え、っと顔を上げれば、傷んだ金髪を一つにまとめてくくるお兄さんがニッと笑った。
「気を付けろよ。この辺は治安悪いからな」
「あ、ありがとうございます…」
小さな声でお礼を言い、お金を手に取る。
な、なんていい人なんだ…。
見た目はアレだけども、その心はまるで仏様のようだ。
人を外見で判断してはいけない。
金髪とか茶髪とかその辺全般を天敵とする俺への、神様からのメッセージのような気がした。
そしてお兄さんが、じゃあな、と俺に手を振り去っていく。
俺は再度ありがとうございましたと頭を下げ、しかし最後に聞こえたその言葉にそのままの体勢で固まってしまった。
あれ、今、じゃあな、って…。
じゃあな、祐介、って…。
祐介、…………って?
ガバッと頭を上げ、小さくなっていくお兄さんをじっと見詰める。
何で知ってるんだ、俺の名前…。
それから不思議な事が立て続けに起こった。
真夜中に俺みたいな子供はやはり危ない連中に絡まれやすいんだろう。
金髪坊主の次にスキンヘッドにカツアゲされ、しかしまたカツアゲされた二千円は俺の手元に戻ってきた。
三度目のカツアゲは銀髪坊主で、けれどカツアゲされた二千円はまた手元に。
全て誰かが取り戻して返してくれる。
なんなんだ、一体…。
しかも何で皆俺の名前を知ってるんだ。
そして四度目。
取り返してくれたその相手にまた名前を呼ばれ、たまらなくなった俺は思い切って聞いてみた。
「あの、俺の事、何で知ってるんですか…?」
すると相手から意外な言葉が返ってくる。
「お前を知らねぇヤツはただのチンピラかピンでイキってるヤツか、クソガキくれーだな」
「えっと、意味が…」
「なあ、俺に助けてもらったって言っといてくれよ」
「はぁ、あの、え、誰に…」
「サソリっつーチームの春日ってんだ、頼むぜ」
それだけ言うと、春日と名乗った男は俺の前から消えてしまった。
や、あの、全く話が見えないんですけど。
俺の勇気を返せ。
項垂れる俺の頭は、しかし次の瞬間にハッと緊張感にとらわれる。
待て、待つんだ。
春日、って、………。
「サソリ…?」
サソリって確か、ミーティングの中で言われてなかったか。
最近傘下に入ったとかなんとか…。
て事は、死神の息がかかった人間て事になる。
パニくる俺の頭。
何で俺を助けるんだ。
知らないヤツはチンピラかピン…、つまり、チームに所属してない人間って意味で…。
でも何で…。
それに春日という男は、一体誰に伝えてくれと頼んだつもりなんだろう。
「意味がわからない…」
混乱する俺の頭に、不意に誰かの手がポンと載せられた。
後ろを見上げれば輝彦さんで。
「悪い、遅くなった」
隣には赤い目をした大魔王。
きっとまた叱られたに違いない。
頭にある尖った耳が、しゅんと萎えているのが見えたような気がした。
「何だよ、カツアゲでもされたか」
ぼーっとする俺の目の前で、輝彦さんがヒラヒラと手を振りながら心配そうに眉を寄せる。
カツアゲ、はい、四回もされましたが何か。
しかし言えば余計な負担をかけてしまうような気がしたし、カツアゲはされたけどお金は戻ってきたから俺は何も言わない事にした。
帰るぞ、と肩を押されて歩き出す。
けれど俺の頭の中は、さっき起こった不思議な出来事でいっぱいに満たされていた。
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