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君のニックネーム①
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つ、辛い…。
あの清々しい朝の空気はどこへやら、だ。
一気に何か、もわもわした息苦しいものに変わってしまったんですけど。
「盗み聞きとかいー趣味してんな」
「す、すみません…」
「朝から俺らのテリトリーに侵入して、いー度胸もしてんじゃねぇか」
「本当に申し訳ないですごめんなさい」
や、ここは謝らなくてもいいような気が…。
いつから屋上がボスザルの所有地になったんだ。
フェンスを背に、2人並んで座る。
右隣にいるボスザルは、タバコをふかしながら空を眺めていて。
間にある1メートルという距離を、いきなりの早さでゼロにされた。
ザ・密着。
酸欠になりそうです。
「さっきの男、一年の何てヤツだ」
「あ、えと…、サタン…じゃない違います間違えました佐田です、佐田雄大」
言い間違えを慌てて言い直す俺に、ボスザルの顔がゆっくりこっちに向きを変える。
そして何かを探るように俺を見詰めた後、俺を窮地に追い込むような質問を投げ掛けてきた。
「お前、色んなヤツにあだ名付けてんだろ」
「っ!!!!!…ま、まさかそんな、付けてないですよ!」
「何だよ今の最初の間。図星さされてビックリしたか」
「ち、違います…」
「ちなみに俺は、お前の中では何て呼ばれてんだ」
「……………」
言えません。
言えるわけないじゃないですか。
ボスザルですが何か。
なんて言えるわけないでしょう。
俯いて押し黙る俺に、ボスザルがずいっと顔を覗き込んでくる。
それから逃げるように左に視線をやる俺に、ボスザルはふっと笑みをもらした。
「別に怒んねぇから教えろ」
「い、嫌です…、あっ、ちが、あの、ないです、付けてません」
「隠されると余計知りたくなる。言え」
「…………」
怒らないとかって言葉をさっき口にしたくせに、もうなんか半分怒ってるのは何でなんですか。
余計に言いたくなくなります。
てか言いません。
絶対に言いません。
言いませんてか言えません。
「祐介」
「おおお怒っても無駄ですあだ名なんて付けてません」
睨まれるのが恐くて、ふいっと顔を左に向ける。
どんなに脅されてもこれだけは言いたくない。
ボスザルです、なんて言ったら何言われるかわからない。
「俺に隠し事、できると思ってんのか」
「………な、何も隠してません」
「あ、そ。じゃ、俺のやり方でその頑固な口を割らせてやるよ」
言うなり、ガッと肩を掴まれる。
反射的にボスザルを見れば、その顔がもう目前まで迫っていて。
逃げる暇もなく、噛み付くようなキスをされた。
「ん、っ…、」
タバコの味が、口から口に流れ込んでくる。
苦味を含むボスザルの唾液が、俺の口の中に入って来てるんだって考えただけで恥ずかしさに体が震えた。
両手をその肩に当て、突っぱねて引き離そうとしてもビクともしない。
そりゃそうだ。
ライオンの力に、子犬がいくら本気を出して抗っても敵うわけないんだから。
大きな手が後頭部に回され、尚深く交わろうとするように、ぐっと押さえつけられる。
無意識に息を止めていた俺は、口内でやらしく動きまわるその舌に、危うく酸欠になりそうだった。
「はっ、はあ、」
「言う気んなったか」
僅かに離れた口から、甘い息がもれていく。
息の仕方が分からない俺に与えられた息継ぎの間。
必死で酸素を取り入れ、息が落ち着いたところでまた深くキスをされた。
も、ダメだ…。
体が溶ける…。
「ん、…」
ふにゃふにゃに力を抜かれた俺の手が、いつの間にか掴んでいたボスザルのシャツから離れて落ちる。
溶けた意識が、俺の口から意味の持たない声を吐き出させる。
そのまま地面に押し倒されて、上からまた、ボスザルが舐めるように口を重ね合わせた。
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