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⑤
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ボスザルもハルさんも何か色々詳しいけど、やっぱりそれは前にボスザルが言ってた、知っておく必要があるから、なんだろうな。
だったらデコピンみたいにここにいる3人も、俺の知らない顔を持ってたりするんだろうか。
あっさりデコピンに退けられたボスザルだけど、姉貴は超有名だって言い方をしていたし。
俺の知らないボスザル。
そんなものは、まだまだ無限にあるような気がした。
「祐介」
名前を呼ばれて、左隣にいるボスザルに顔を向ける。
どうしたと柔らかい眼差しで俺を見るその男に、何故か胸が燃えるように熱くなるのを感じた。
ああ、知りたい。
この人の全部を知りたい。
全部を全てを知って、今度は誰も知らないボスザルを見つけてみたい。
俺だけが知るボスザルを、俺だけの中に作りたい。
それは急激に沸き起こった、とてつもなく強い独占欲だった。
「顔、赤いな。熱でもあんのか」
ぼうっと熱に浮かされ焦点がままならない俺に、ボスザルがゆっくり顔を近付けてくる。
それからピタっと額をくっつけ、熱がない事がわかるとそのままの状態でボスザルはまた口を開いた。
「知恵熱か?」
からかうように口の端を吊り上げるボスザルを、うっとりするような眼差しで見詰める。
沸き起こった独占欲は、俺の意識からボスザル以外の存在を綺麗に消してしまった。
それから、羞恥心も。
「祐介、何だよ」
何も言わない慌てる事もしない俺に、不思議そうなボスザルの声がかかる。
思わず、口を吐いて出そうになった。
「あ、あ…の、」
「ん」
深い、熱い眼。
目で、愛撫されてるような気持ちになった。
キス、したい。
半開きになったままのだらしない口を、無意識に近付けていく。
それに気付いたボスザルが一瞬驚いたように目を見開くも、またすぐにふっと優しい目付きになって。
顎を人差し指で軽く押し上げられ、顔が僅かに上を向いた。
「祐介、言ってみろよ」
口と口が触れそうなくらいの微妙な距離の中、ボスザルが熱っぽい瞳で俺に何かを求めてくる。
ああ、どうしよう。
言ってしまうかも知れない。
「えっちなキスして、って言ってみ」
息がかかる。
心臓がばくばくと音を上げ、胸が痛いくらいにきゅっと疼いた。
「あ…、え―」
「ふぇっ、きシッ!!」
「……………」
その音は、俺を一瞬にして夢の世界から現実へと引っ張り戻した。
目が点になる。
「ばっかゴンタ!いーとこだったのにざけんなよテメー!」
「だ、だって鼻が―」
う、
「うわあぁあー!!ちちち近いですよな、ななな何やってるんですかっ!!」
ガバッと勢いよく立ち上がり、ボンッと赤く熱を持った顔を半分腕で隠した。
な、何をやってるんだ俺は!
あ、危ない…、危うく二度も破廉恥極まりない行為を見られるとこだった…っ。
危ない…っ。
「何って、お前から誘って来たんだろうが」
「さそっ!?さ、誘ってませんよななな何言ってるんですか!!」
夢の世界での出来事を都合よく記憶から削除してしまった俺には、ボスザルのその言葉はからかいとしか捉えようがなく。
誘ってきた、なんて言われて、俺の全身がゆでだこのように赤く染まりきった。
「口開けて、物欲しそうにしてたじゃねぇか」
ボスザルはボスザルで、事実を伝えてるだけなのにと俺の反応にやや不満気。
その他諸々都合の悪い事を全て無視して俺は捲し立てた。
「し、してません!!なな何わけのわかんない事言ってるんですか付き合い切れませんもうあの帰ります俺!!」
足元に置いてあった鞄をひっつかむと、俺は出口に向かって一目散に逃げ出した。
ああそうさ覚えてますよ。
夢の世界での自分の思考から言動から全て覚えてますよ。
だからいられないんじゃないか…っ。
恥ずかし過ぎるっ!!
あの夜、言いたくなる、と言い切ったボスザルは正しかった。
だって言いそうになった。
そう思った。
えっちな事して欲しいって、思ってしまっ―
「うわあぁあー!認めませんっ、そんな淫らで破廉恥な思考回路っ!!」
叫びながらゲームセンターを飛び出した。
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