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⑦
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三匹に連れて来られたその場所は、ボスザルの行き付けの店とよく似た場所だった。
カウンターにボックス席が4つ。
広いその空間には、わらわらと野犬軍団が所狭しと集結している。
ますます小さくなりながら、俺はチリチリ犬に腕を強く引っ張られながら歩いた。
そして一番奥のボックス席に突き飛ばされるようにして立たされる。
「何だよこのガキ」
そこには我が物顔で足を広げ腕を広げソファにふんぞり返っている男が一人。
耳上3センチ程、その両サイドは刈り上げられ、残った黒い髪は後ろでまとめられている。
耳には当たり前のようにピアスがひしめき合い、一重の細い目がより一層その人相を悪人面に仕立てあげていた。
どんな角度から見ようとも高校生には見えない。
「死神の木嶋尚吾、ヤツの弱み、らしい」
チリチリ犬はそう言って、また携帯をオヤジ犬に手渡した。
その画面を見ながら、オヤジ犬は俺にもチラリと目を向ける。
そして携帯をチリチリ犬に返すと、なんともオヤジらしい笑い声を上げた。
しばらく笑い転げた後、指先で目尻を拭う。
「あの男、マジかよ、え、これ?」
もうおかしくてたまらないんでしょうね。
話ながら思い出したようにイヒッ、とか、ぶふっ、とか、本当に気持ち悪い。
「んじゃまぁ、コイツ使って木嶋潰すか」
いや、だから違いますって。
何で俺がデコピンのお気に入りって事になってるんだ。
聞きたい、というかチリチリ犬の携帯を見たい。
死んでも言葉には出来ませんけど。
「で、死神を解散させる。それによりバックは無効化、純粋なチーム同士による頂点争いの勃発だ」
一人ベラベラと喋りながら、オヤジ犬はまた盛大な笑い声を上げた。
ああ、箸が転げてもおかしい年頃なんですね。
そんなおっさん顔なのに。
そして一通り笑った後、オヤジ犬が大きな声で言い放つ。
「誰か木嶋にコンタクト取れ。大事なもん預かってるってな」
そう言った後、オヤジ犬は俺に目を向けた。
「チビ、ちょっとだけ付き合ってもらうぜ」
イヤだぜ!!
とは言えず、俺はそのまま後ろに両手を縛られ、目隠しまでされ、気付けば車に揺られていた。
……………………。
これって、拉致じゃないんですかね。
犯罪じゃないですか。
固いシートに座りながら、痛くなってきた両手首に眉を寄せる。
目隠しされてるから、今どこを走ってこれからどこに連れていかれるのか皆目見当もつかない。
少しくらいは痛めつけられたりするんだろうか。
そんな恐ろしい事を考えてはぶるぶると体を震わせた。
しばらくして、多分ワゴン車なんだろう、少し離れた場所から会話が聞こえてくる。
「あんなシケたガキが木嶋の弱点とかまだ信じらんねぇよ」
「つかそれが本当だったら、雄大に誘惑させてバカ高のトップにさせなくても良かったんじゃね」
「シッ!しゃべってんじゃねぇよバカだな」
……………………。
サタンにデコピンを誘惑させてバカ高のトップに押し上げた?
何でわざわざそんな事をする必要があったんだ。
さっきオヤジ犬が言ってた、死神を解散させる為だったんだろうか。
それとデコピンがバカ高のトップになる事と、どんな関係があるんだ。
いやいやその前に、サタンはコイツらと仲間だったのか。
てか、コイツらって一体なんなんだ。
聞こえてきたその内容に、手の痛みに耐えながら悶々と1人考え込む。
そうこうしているうちに車が止まった。
「とりあえずここで待機だ」
エンジン音がやみ、一気に静寂に包まれる。
そのうちタバコの煙で充満し出した空気に咳き込めば、微かに窓を開ける音が聞こえて感動した。
不良でも、やっぱりいい人っているんだよなぁ。
思い切って手の不快感も伝えてみた。
「あ、あの、手首が痛いんですけど…」
「あぁあ?」
「すみません調子に乗りました本当にすみませんこんなもの我慢します」
腹の底から唸るように凄まれて、俺はぎゅんっと小さくなった。
あー恐い恐い。
やっぱり何でも調子に乗るのはいくないな、うん。
外の匂いが僅かに漂う中、目隠しされて真っ暗闇の目の前に段々睡魔に襲われ始める。
もしかしたら痛い事されるかもわかんないのに何て緊張感がないんだ俺は。
だけど睡眠不足の体にそんなものは通用しない。
まんまと爆睡してしまった。
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