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③
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「祐介」
「はい…」
まとまらない頭を持てあましながら、呼ばれた声に慌て涙を拭う。
だけど、聞こえたその言葉に、涙腺は壊滅した。
「も、やっぱり…っ、好きじゃ、なくなっ、」
ひくっ、と嗚咽を漏らす俺を、ボスザルがぎゅっと抱き締める。
髪に口元を埋めて、それから背中をゆるく撫でてくれた。
「そうじゃない。ある程度落ち着くまでだ」
「あ、…ある、程度…っ、て、」
ダメだ、涙が止まらない。
こんな立て続けに許容範囲を遥かに超える事態が起きて、さすがに俺もたまらなかった。
ひっく、としゃくりあげる俺に、ボスザルは苦痛に歪む顔で静かに優しく、キスをしてくれた。
「なるべく早く」
「う、っ、いやだ…っ」
ああ、駄々をこねるな祐介。
これじゃ聞き分けのないガキみたいじゃないか。
キスをされながら、嗚咽と一緒に言葉を漏らす。
ボスザルと離れなくちゃいけないなんて、そんなの嫌だ。
落ち着くまで完全に接触を経つなんて、そんなの嫌だ。
会えない、声も聞けない、そんなの、耐えられるわけないじゃないか。
この一週間だって、どんなに不安で寂しかったか。
「祐介、そこまで長くはかからない」
体を離そうとするボスザルに、俺は咄嗟にしがみついた。
羞恥心なんて入り込む余地もない程に、頭はぐちゃぐちゃに混乱して。
「1ヶ月後とか、なしにしようって、思ったのに…」
今日、2人だけになれたら俺の気持ちをすぐに伝えようって、思ってたのに。
なのに、何でなんだよ…。
「それって、すぐにでも付き合ってくれた、って意味か」
タバコの香りがするその胸に顔を埋めながら微かに頷けば、今度は強く顎をとらえられ、深いキスを施された。
心臓が、また痛みを訴え始める。
震える指先を伸ばして、俺はその首根に腕を回してしがみついた。
「ん、んっ…」
激しい口付けに、喉の奥から熱い息が競り上がってくる。
体が疼くように痺れをみせて、より一層強く、俺はその首にしがみついた。
離れたくない。
傍にいたい。
好きだ。
心はもう、気が狂う程にこの男を求めて止まなかった。
「は、あっ…」
朦朧とする意識の中、俺の口は動いた。
恥ずかしいとか淫らとか破廉恥とか、もうどうだっていい。
お望み通り、言ってやろう。
言いたいんだ、今すぐに。
互いに、熱く潤んだ瞳をぶつけ合う。
躊躇いもなく、俺はその言葉を吐き出そうと。
「祐介、言うな。今それを言われたらお前を手離せなくなる」
なのに、ボスザルが強い言葉でそれを阻止して。
「て、手離して欲しくないっ…、だから、言う…っ、えっ―…ん、」
負けじと声を荒げれば、今度は口で口を塞がれた。
それでも俺は言ってやろうと、キスから逃れては口を開いて。
「祐介、困らせんじゃねぇよ」
「だって、イヤだ…っ、嫌です…」
「お前が拉致られたのは俺の責任だ。逆手に取られる事をわかってなかったわけじゃない。それでも俺はメールを配信した。お前は、俺のものだって言いたかった」
また、涙が溢れた。
もう武藤祐介は無関係だとする為に、ボスザルはしばらく俺から離れろと言った。
また今回のように俺を人質に取られたら、思うように動けなくなると。
仕方なく頷けば、離れてる間、誰ともえっちな事しないって約束は守ると、ボスザルは赤くなる俺の額に唇を押し当てた。
気持ちを伝えられない事がどれだけ辛くて苦しいものか、俺はこの時初めて知った。
何度もキスを交わして、何度も確かめ合うように抱き合う。
落ち着いたら迎えにいく。
そう約束を交わした後、俺はクマさんにマンションまで送られた。
正直、チーム云々なんてどうだっていい。
くだらないとすら思う。
でも、好きな人がそっち側にいるんだからそれはもう仕方のない事で。
今日というその日に、俺は強くなろうと覚悟を決める。
そして、脱・チキン計画なるものを夜中まで考え込んだ。
守られる立場から守る立場へ、少しでも近づきたくて。
鼓動 END
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