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「先生〜…?戻りました〜」
「あ、薬受け取れましたか?それじゃあ帰りましょうか」
「は…はい」
「どうかしましたか?」
「いや…ちょっと、緊張しちゃって…」
_先輩以外の家行くなんて…初めて…だし…
「あーもう可愛い」ボソッ
「ん?何か言いましたか?」
「いいえ、ただ風上さんは可愛いなぁと思って」
「かわっ??!!そ、そんなの…男に言うセリフじゃないですよ…」
_か、か、可愛いって…
でも、それ聞いて嬉しくなっちゃう僕も…
「そうですか?でも顔に嬉しいって書いてますよ?笑」
「えっ?!…って顔に出るわけないじゃないですか!!」
「あははっ!!やっぱり騙されやすい笑」
「〜っ!!もう早く行きましょ!!!」
「…………そうやって、笑っててください。私の前では。私の前ならなんだってしていいんです、我慢しなくていいです、風上蒼太を作り上げなくていいです、自然体でいいんですよ」
「……!!」
_先生は僕の核心を突いてくる。
全部、見透かされる。
だけど、心地良い。
嫌、じゃない。
「あ…、先生は僕のこと全部分かってるみたいですね」
「……わかりやすいですからね、風上さんは」
「そ、それはそれでちょっとショックかも…」
「そういう所も風上さんのいい所ですよ。裏表がなくてどんな人にも直球で。きっと風上さんをここまで立ち直らせたのは"先輩"のおかげですね」
「えっ……」
_そうじゃなくてむしろ………
「あ、家ここのマンションなんです。私、車庫入れ苦手で…少し黙りますね」
「はい…」
_考えすぎたらもっと体調悪くなる。
明日には治さなきゃなのに。
でも考えちゃう。
ああもうやだなあ。
どれだけ歩いたって光は見えてこないよ。
「…ふぅ、それじゃあエレベーター向かいましょうか」
「…あ、」
僕は小さくコクと頷いた。
先生の家は先輩のと比べるとちっちゃくて、でも、それが緊張を少しだけ解してくれた。
「そういえば風上さん、アレルギーとかありますか?」
「ああ…アレルギー検査?とかしたことないんですけどでも、埃とかいっぱいあるところに行くと咳出ます。あと、花粉症?も多分。食べ物は…アレルギーかどうかはわかんないですけど施設でパイナップルとキウイが出た時、舌が痺れるような感じが…」
「ハウスダスト系ですかね?あとは花粉症と、パインとキウイはアレルギーではなくてその果物が持ってる"タンパク質分解酵素"と呼ばれるものが舌の上や頬の粘膜にあるタンパク質を溶かしてしまうことで粘膜が剥がれ、本来果物が持っている刺激などを過激に受け取ってしまいそれを痺れやトゲが刺さったような痛さに感じてしまうんです。恐らくそれではないですかね?詳しい検査をしてみないと分からないですけど」
「……」
「あっ…ちょっと難しかったですか、ね」
「………いえ…いえ!なんか凄く…先生!って感じがして…えっと、なんていうか…めちゃくちゃかっこよかったです…!!!」
「…あ、そ、そうですか…?」
先生は少し頬を赤らめて下を向きながら言った。
先生って…
「…こんなことで照れるんですね」
「っ!…照れますよ。可愛い可愛い私の大事な人がかっこいいと言ってくれたんですから」
また先生はそうやって歯の浮くようなセリフを言う。
そしてまた無意識に赤くなった僕の頬を見て、優しく笑うんだ。
それはそれは…優しい笑顔で。
「ふぅ…お喋りも程々にして家に着いたことですし病人はそこの寝室で寝ててください」
「僕がベッド使って良いんですか…」
「病人を退いてまでベッドに寝たくはありませんから。ほら、熱上がっちゃいますよ。おかゆなら食べられますかね?作ってきます」
「あ…」
そう言って先生はキッチンのあるリビングへ向かっていった。
僕は先生のご好意に甘えてベッドに腰を下ろした。
白を基調とした部屋に真っ黒のベッドが際立っている。
部屋には小型のテレビも付いていて、先生は毎日ここで過ごしているんだと思うと何だか先生のプライベートなゾーンに入れた気がして嬉しい。
そう思ったのもつかの間。
徐々に体温が上がってくるのがわかる。
視界はぼやぼやとして、先生がお粥持ってくるんだからと頭に呼びかけてみたものの、体は抗えず深い深い夢の中へと落ちていった_
「………ん…」
「…起き…した……か…?……」
_だ、れ?
「…起きましたか?風上さん」
「…………うわっ!!!!」
_ガツンッ
目が覚めると先生の美形の顔が目の前にあって思わず頭突きをかましてしまった。
「…って、先生?!大丈夫ですか?!」
「あ、ああ…だ、大丈夫です…よ…」
「すみません、夢と区別がついてなくて…」
「いえいえ、痛いですけど本当に大丈夫ですよ。それよりお粥、食べられますか?」
「…あんまり、お腹すいてなくて…」
「そうですか…それならお茶碗1杯分ぐらいなら食べられますかね?」
「それぐらいなら…」
「なら食べましょう!ご飯食べないとお薬飲めないですから。医者の立場からするとあまり宜しくは無いんですが…明日、仕事行くんでしょう?」
「あ……たっ食べます!!」
「元気が出てよかったです…ここに持ってくるので待っててください」
そっか、僕。あのまま寝てたんだ。
それにしてもよ…。
「寝起きにイケメンは心臓に悪い…」
目、開けた瞬間にイケメンが目の前にいたらびっくりして起き上がっちゃうよ…。
先生、痛かったよね…。ああ…本当情けない…。
「…今、何時?」
携帯を開いてみると今はもう夜の11時過ぎだった。
「寝すぎた…」
これ今日寝れるかな…
数分後、先生がお粥を持ってきた。
「風上さん、これまだ熱いので火傷には気をつけてくださいね」
「はい」
よくある普通の卵がゆ。
それなのに美味しくて、おいしくて。
1度、鼻を啜った。
「良かった、全部食べられましたね。それじゃあこの薬を飲んでもう寝てください」
「あ、何から何まですみません…」
「…風上さん今日だけで何回謝ってるんですか?もう聞き飽きました。こういう時は謝るんじゃなくて感謝されたいものですよ」
感謝…
「…あ、ありがとうございます」
「大正解」
そう言って優しく頭を撫でられた。
「ほら、もう寝てください。お風呂は朝入ればいいですから」
先生は僕の体に布団をかける。
少しひんやりとした布団は僕の体の熱を奪った。
ああ、また眠たくなってきちゃった。
「先生……?」
「…ん?どうしましたか?」
大人に見向きもされず、透明人間みたいに生きてきた僕が
初めて愛した人に裏切られた僕が
今、こうやって笑えているのは先輩のおかげじゃない。
「僕ね…先生、のおかげ…でこんなに…笑えるんだよ…」
最後の方は声に出せていたかも分からない。
だけど伝えたかった。
ちゃんと…伝わってるといいな。
_そこで僕は意識を飛ばした。
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