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(はじめの一歩②)
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「…?え、えっと…大丈夫ですか?」
余りにも似ていたけど、声を聞くと別人だとわかり少し落胆した。
「あ、ああ…すまなかった。ありがとう」
結局俺はどのくらい寝ていたんだろう。終電があるといいが。
まだ寝ぼけ眼のまま電車へ向かおうと歩き出すと、後ろから声が聞こえた。
「…あの!そっち電車の方ですけど…もう、終電ありませんよ…?」
「嘘だろ……ご親切にどうもありがとう、この近くにビジネスホテルか何かあったら教えて欲しいんだけど…」
手持ちは少ないけど1泊ぐらいなら…そう思った時だった。
「よ、良かったら…家、来ますか?」
こんな素っ頓狂な提案が聞こえてきたのは。
「は?……あ、いや…流石に見ず知らずの人の家に上がり込むほど困ってないから」
俺は1晩泊まるお金もないほどの奴に見えるのだろうか…
それは少し…悲しいな。
「…それなら、単刀直入に言いますけど…貴方に一目惚れ、して…ここでさよならしたくないんです…」
ド直球に言ってくる蒼太似のその人は外見とは裏腹に中身は蒼太と正反対だった。
「……ごめんだけど、俺、忘れられない人居るから」
頭に浮かぶのは__
「さっきのそうたさん…ですか?」
「、うん。そうだよ」
別に嘘つく必要も無い。
「さっき、俺のことそのそうたさんと間違えてましたよね…?俺ってそうたさんに似てるんですか?それなら…俺のこと、そうたさんって思ってください!"忘れられない"ってことは…付き合ってはない…ですよね、俺のこと身代わりでもいいので…!」
言いながらジリジリこちらに向かってくる。
その顔に逆らえなくて、だけど、身代わりなんて…
「……断るよ、身代わりなんて辛いだけだ。ただまあ…家には行かないが連絡先交換するか?」
ここまで一途に好意を伝えてくれる彼が必死に飼い主に付いてくる小動物のようで可愛いと思えた。
「はい…はいっ!!!!」
==
「三枝凪(サエグサ ナギ)くん…で、あってるかな?」
「あはい!凪って呼んでください!貴方は…高崎翔太さん。素敵な名前…」
「はは…ありがとう。君、可愛いんだから帰り気をつけなよ、じゃ」
もう、用はないだろうとその場を去ろうとした時、また彼__三枝凪の声が聞こえてきた。
「あのっ!!!…え、っと…可愛いって言ってくれてありがとうございます!高崎さんもかっこいいですよ!!!」
「……っ!!!!!!」
この子は本当に……
簡単にそんな言葉を言ってのける。
本当に…
羨ましいよ。
「ありがとう」
それしか出てこなくて、振り向くこともせず歩いた。
そしてホテルに付くと、通知がピコンッと鳴った。
「………ははっ…あーあ………俺って単純な奴だな…」
_その画面には凪の満面の笑顔とトイプードルが自撮りで送られてきた。
ご丁寧に、
"大好きです!翔太さん!!!"
なんて文面を添えて。
今日あったばかりなのに…
どうしてか、こいつが可愛くて堪らない。
「…もう、人を好きになるなんて…ダメだと思ってた、無理だと思ってた…だけど…」
こいつなら、そんな俺の心でさえ溶かしてしまいそうでならない。
_俺はまだ蒼太を忘れられないし、今後忘れることなんてできない。
だけど…
ゆっくり、ゆっくり、こいつと一緒に
前に進んでみるのも悪くないのかもしれない。
「蒼太は俺の事なんて言うかな…」
心変わり早すぎ!
とか?(笑)
「…いや、蒼太なら………」
優しくて、強い、彼なら
きっと_
幸せになってくれてよかった
なんて言うのかな。
_あーあ、全く…厄介な相手に惚れられたもんだ。
〜続〜
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