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完結後の世界 =4(戸惑い)
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美玲side
「あーあ…終わっちゃった、な」
カッコつけて自分から言い出したことがこんなにも私の首を締め付ける。
目覚ましの音より先に起きた時、
茶柱がたった時、
お会計が777円だった時、
…そんな、ふとした幸せを貴方と共有したくなる。
ふと夜の空を見上げても、こんな都会の空じゃ何も見えやしない。
「田舎…帰ろうかな」
_結局、あの後私たち一家は祖父母の家へと転がり込みそこで育った。
大学への進学を気に、父と兄の命日にしか帰ってなかったけど…
「もう、ここでしたいこともないし…」
将来の夢なんて漠然としか決まってなくて、それなら、意地張ってこんな星も見えないところに居なくたって…
うん、そうだね。
_ありがとう、翔太。
「…もしもし、お母さん?あのさ…_」
_大学3年の春。
私は退学届けと共に、少しの間の夢と、愛を、ここ東京に置いて、電車に乗った_…
ガタンゴトンと揺れる車内は、私を眠りへと導いた_
_懐かしい夢も、最近の夢も、全てが走馬灯のように流れていく。
成人するまでは暗くて、重たい。
幸せなんてほんのひと握り。
だけど大学に入ってからは明るい。
きっと愛する人ができたから。
人間は不幸と幸福が平等にあるらしい。
なら、これからの私は…_
「……………」
ふと、目を覚ますと窓の向こうはもう、みどり一色で。
あの頃の景色とリンクして、ほんの少し目が潤った。
「…今頃、翔太はそうたくんと上手くいってるかな」
上手くいってなかったらそれこそ今度は翔太の顔、殴ってやるんだから!
「…ってもう会うこともないだろうけど、ね」
それから数十分経ち、無人の駅に着いた。
本当はここに帰ってきたくなかった。
家族の顔を見たらどうしても、あの、悲劇が思い出されるから。
でも、もうそろそろ、向き合う時が来たのかもね。
「すぅーはぁー…うん、やっぱり田舎は空気が澄んでる」
==
家の前に着いたはいいものの、緊張して玄関前でずっと立ち尽くしてる。
「美玲………?」
後ろから声が聞こえた。
それは…_
「お母さん…」
記憶より歳をとった母がいた。
「あんた…そんな辛気臭い顔して…大学は?」
「…それ含めて、話さなきゃいけないことがいっぱいあるの…」
勝手に家を出て、それなのに、また勝手に大学辞めて…
今更、何をいえばいいんだろう。
何をいえば許されるんだろう。
母の目を見れなかった。
「…そうかい、そうかい…うん、とりあえず…
おかえり、美玲」
そんな言葉一つで、全てが救われた気がした。
「うん…ただいま、お母さん…!_」
_古びた家、キシキシいう床、壊れかけの扉。
そんな家に今日も朝日が当たる。
そこには母と娘の、暖かい家庭が存在していた…_
〜完〜
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