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完結後の世界 =8(不器用な愛④)
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「それから私は気づきました。蒼太くんが無視を…いや虐めを受けていると。きっとこれは罰なんだと思いました、今まで子供たちに向き合ってこなかった罰が来たのだと。それが罪滅ぼしになるとは思いません、それでも進学させることが私に出来る唯一の…貴方に出来る親としての仕事だと思いました。今更私が声をかけるなど許されない、なら友を持ってこの施設以外に居場所を作って欲しい、と願ったんです。あぁ、長くなってしまいました。すみませんね…それで大学への費用も出し貴方の通帳にお金を振込みました。もし叶うならここでの生活を忘れて幸せに生きていて欲しい…なんて、都合いいですかね。でも、安心しました。今日こうやって蒼太くんは1人ではなく他の誰かと一緒に来てくれた…それが何より私は嬉しいです。あぁ、この歳になるともう涙腺が緩くなってしまいますね……蒼太くん、私に過去を振り返らせてくれてありがとう。その、隣にいる方も蒼太くんを見守ってくれてありがとうございます。元気そうでよかった、私に会いに来てくれてありがとう」
…しら、なかった。
知ろうとも思わなかった。
勝手に偽善者扱いして、さっきだってなんで僕には優しくしてくれなかったのとか考えて…違った。
違ったんだ。
施設長を変えたのは僕だったんだ…
「…こちらこそ、施設長のおかげで生きていけます。ありがとうございます。あの、僕が言えたことじゃないけど…また来ます!だから、、その、生きててください。お土産話持ってきますから!」
他にもっと不満とか、辛かったとか、伝えたいこといっぱいあったのに、もうそんなのどうでも良くなった。
この優しいおじいさんを傷つけられる程僕は傷ついてない。
この施設がまだあった。それだけでもう…いいや。
「君にそう言われてしまえば、生きざるを得ませんね…もし私が君のことを忘れてしまっていたらまた思い出させてください。同じ話をするかもしれませんがご愛嬌ということで…もう帰りますか?門までお見送りします」
「いえ!大丈夫です、もう、1人で歩けます」
「そう、ですね…そうでした。もう小さな子供じゃないんですね、なんだか感慨深いものがあります」
「そうですね、僕もなんだか…暖かいです。それじゃあお邪魔しました。お元気で」
「えぇ、また来るのを楽しみにしていますよ」
_施設に背を向け歩き出す。何年か前はここを出る時、こんな気持ちで歩き出すなんて考えもしなかった。
「彰さん、この後どこか行きますか?」
「んー俺は蒼太と家でゆっくりしたいけど、どこか行きたいところあるの?」
「いえ…ただ、なんだかずっと突っかかってた蟠(ワダカマ)りがすっと無くなって…心が軽くて。今ならどこへでも行けそうだなって思ったんです!でもやっぱり僕も彰さんとゆっくりしたいな」
「そっか、じゃあ早く帰って一緒にご飯食べよう」
「はい!!」
_ 1年後、また老けた施設長が"おかえりなさい"と蒼太を出迎えるのはまた別のお話。
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