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一人ぼっちの少年と虎 最終話
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虎の恩返し
第3話(最終話)
ルビーのたたった一人の現実の友人の双は少し成長しオシメをしなくても良くなってからはミルクの代わりに緑の流動食しか飲ませて貰えていないのを虎のルビーも知っていた。
その理由は祖先の霊に聞いても判らず双の食事に関してだけは自分の安眠の天敵のように思える双だが可哀そうにルビーは思っていた。
火の輪潜りに成功した翌日に工事中だった池が水に満たされルビーの見知らぬ魚がその日の夕方に大量に放された。
祖先の霊に聞いてもその魚は南の国の物で祖先の住処に流れていたアムール川に居ない魚で何も教えて貰えなかった。
「数百匹は池に放されたぞ!」
「あの魚俺が捕って味見して美味しければ双に食べさせてやりたい」
そう思った虎のルビーは兵士達が池から立去るのを待って頭から池に飛び込んだ。
「俺たちより大きな動物が池に飛び込んで来たぞ!」
「逃げろ!」
池に放されたばかりの魚がお互いに叫びルビーから逃げよとした。
池に放された魚は本来臆病な魚で人間が川に立ち入る音を聴いただけで一目散に散らばり逃げる魚なのだ。
「あれ!」
「血の匂いのする水だ!」
「餌だぁ食らいつけ!!」
池の魚がルビーの方を振り向きそう叫んだ。
ルビーは火の輪潜りの練習の時に怪我をしていた。
虎のルビーの傷ついた両耳と尻尾の傷は黒と黄色の虎模様の自慢の毛並みの中に隠されていたので双にも気づかれずに居たのが災いした。
体調が15cm位で刺身にも出来、焼けばホッケのように身がホコホコで美味しくたべる事の出来る鯉と似た色の魚は普段は大人しい。
だが血の匂いを感じると豹変し獰猛になるアマゾン川のピラニアだ。
ルビーの血の匂いのする尻尾に3匹、両耳に1匹ずつ合計4匹が鋭い歯で瞬時に噛みついた。
「な・なんだぁ!」
「俺が魚の餌にされるのか?」
「俺は虎でお前たちは魚だろう?」
虎のルビーはピラニアの思いもしなかった行動に対し頭の中でそう叫んだ。
「あっ!痛い!」
次の瞬間にルビーは鼻の頭を鋭い上下の牙合計20本ぐらいで1匹の大きめのピラニアに齧られた。
「な・何をする!!」
それが致命傷になったルビーは驚き一目散に池から逃げ出した。
池から飛び出したルビーは初め尻尾に噛み付いたままの獰猛なピラニアを引き離すためにクルクル回りだした。
しばらくすると息の出来なくなったピラニアが地面に力尽き落ち真に最後の掉尾の一振を示した。
「クソ!」
「鼻の頭を齧られた!痛い!」
ルビーは地面に落ちたピラニアを観てホッとした瞬間に敏感な鼻の痛みに気づいた。
今度は四つん這いに寝そべり自分で舐める事の思うように出来ない所に思い切り赤い舌を上に長く伸ばし舐めだした。
同時に爪を潜めた右前足で其処を何回も摩り出した。
後日その映像が監視カメラに写されていたのを観た柳瀬と兵士達が腹を抱えて笑った。
「味見してみるか?」
しばらくして鼻の痛みの緩和したルビーは地面に落ちていたピラニアを1匹食べて見たら美味しかったので2匹目を食べた。
その翌日の朝になり双がルビーの寝床に現れた。
「ルビーその魚どうしたんだ?」
何も知らない茶髪の双(そう)が怪訝そうにルビーと魚を交互に見詰めながらそう言った。
双にそう言われたルビーは新しく作られた池の方向に首を、少しだけ持ち上げ顔を向けた。
「あの新しく出来た池に居たのか?」
それを観た双がルビーにそう言った時に人間の言葉の判るルビーは深く頷いた。
ルビーは四つん這いに寝そべったままで自分の目の前の下に置いてあったピラニア2匹を1匹ずつ順番に自分の体から押し返すように双の足元に向け右前足で差し出した。
「美味しかったから双(そう)食べて・・・」
ルビーは人間の言葉が喋れないから頭の中でそう言った。
差し出した物の側にはルビーに食べられたピラニアの2匹の尻尾だけが残されていた。
「ルビー僕の為に食べずに残していてくれたのか?」
虎のルビーが再度頷いた。
その時に双は少し血が出た後の残っていたルビーの両耳と尻尾と鼻の頭に初めて気づきルビーの元に駆け寄り屈んで両手で強くハグした。
「僕は緑の流動食以外食べたら死ぬかも知れないだぁ!」
「だから食べられない!」
双が泣き顔になりルビーにそう言った。
寝そべっていたルビーがそれを聴き立ち上がり双の涙を赤い舌で舐め取り始めた。
「俺が毒味をしたから大丈夫だ!」
「どうして食べる事が出来ない?」
双の涙を舐め終えたルビーは双を両目で見詰め視線でそう訴えた。
「ルビー僕は柳瀬様の一番のお気に入りであると同時にペットでもあるし奴隷でもあるからだよ」
長年お互い喧嘩はしてもいざとなれば唯一の心の判り合える事の出来る双とルビーはお互い見詰め合ったまましばらく動かなかった。
「ルビー待って居ろ」
「傷の手当てをしてやるから救急箱を取りに行ってくる」
しばらくして双はそう言ってルビーの元を離れる時に自分の足元に差し出された2匹のピラニアを手で拾いルビーの目の前に差し出し項垂れ姿を消した。
でも双の心の中はルビーの優しさにこの日は救われていた。
終わり
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