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金色の瞳のチェシャ猫のお話7
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「あの…この子…」
様子をみて何かを悟り、花風はチェシャに近づいた。
「チェシャさん…大丈夫ですか?歩けます?」
花風に声をかけられる。彼はチェシャの顔と名前を知っていた。
「有り難うございます」
花風は、心配そうにチェシャを見つめる2人の女性に御礼を言った。
「大変助かりました…ただ、竹林への立ち入りはご遠慮くださいませ」
花風は、穏やかに2人にそう告げると2人は後ろ髪を引かれながらも寺社を後にした。
「遅くなりましたっ!」
明雪が駆け寄り、薄手の毛布を抱えていた。
「…チェシャさん。私と花風で御連れしますが、よろしいですか?」
チェシャは、フルフルと首を振った。
「住職は、法事の真っ最中でとても来る事は出来ません」
それでも、チェシャは首を横に振った。
「失礼!」
明雪は、そう言うとチェシャの頭から薄手の毛布をかける。そして、強引に肩に担いで立ち上がった。
「行きましょう」
おおっ
と花風が感心していたが、明雪は先を急かした。
「そ、そうですね行きましょう!」
ぐったりとしているチェシャは、抵抗をする事は無かった。明雪と花風はチェシャをなるべく一目の触れないように寺社の中へ運ぶと、住職の部屋へとチェシャを運んだ。そして、布団をだしてその上へ寝かせて2人と部屋を後にした。その事実を法事で忙しい住職へ伝えるかどうかと、相談していたその時、
「うあっ!いたいたっ!」
六花に出会い頭に会う。
「住職が探されていましたよ」
どうやら、読経が終わったらしい。
「ああ…スイマセン」
明雪と花風は、六花と共に廊下を駆け抜けた。
この寺社には、他にも手伝いで、仏教学校から友人数人に手伝いを頼んではいて、雑務をこなしてもらっているのだが、如何せん手が足りていない。猫の手も借りたい…と言った感じだ。
「ああ…明雪、風花」
「住職…おつかれさまでございました」
明雪と花風は、余裕のない表情で頭を下げた。法事ようの特別な袈裟に身を包んでいる住職は、いつにも増して威厳がある。
「どうかしましたか?」
住職に尋ねられるが、3人は顔を見合わせた。言おうか、言わないか悩んでいた。ただでさえ忙しい最中、住職に負担を強いるようなことを言って良いのだろうかと思ったのだ。
「…どうしました?」
3人の様子もそうだし、そもそもの何か問題を抱えている事を住職は見抜いている様子だった。
「私のことよりも、人のための行いを優先させなさい」
住職の穏やかな言葉に、明雪が顔を上げた。
「はい。チェシャ様が体調を崩されて、床に伏せております」
「はい。住職は法事の最中でありますため、報告を優先させて良いのもか考えておりました」
明雪と風花は、住職にそう報告をした。
「そうですか。わかりました」
天花は、その報告に大きく頷いた。
「あとの御支度は、御任せできますね」
3人は、大きく頷いて「はい」と答えた。
「10分で戻ります」
住職はにこやかだが、急いで廊下を歩いていった。天花は普段とは違う重量のある袈裟を着崩れないように、注意を払いながら、足早に廊下を駆け抜け、自室に急いだ。
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