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金色の瞳のチェシャ猫のお話17
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@@@@@@
「あら?いつものお2人じゃないのね?」
檀家さんがやってきて、庭掃除をしている八朔を見て驚いた。
「はい…明雪兄さんと花風兄さんは休暇中です」
日本画のような儚さと美しさを持つ八朔。
「それから、六花兄さんは今療養しております」
八朔はカラーコンタクトを外している事から瞳の色が美しい緑色をしている。
顔立ちも美しい彼の魅力が更に上がる。吸い込まれそうなほどの美しい瞳のミケに、檀家さんは視線をそらした。
「…ああ…そうなの」
その微笑みに当てられてそそくさといなくなった初老の女性は、何かの相談にやってきたのだろうが、今日は朝から天花は葬式の読経に行っていて不在だ。
その旨を社務所内で勤めをしているチェシャに聞いたのだろう。
「…」
八朔…基、ミケは広い敷地内の掃き掃除を終えた。
箒を用具入れに戻して、社務所へと向かう。
「玉屑(ぎょくせつ)」
ミケは、社務所でお守りの整理をしている、僧侶のチェシャに話しかけた。
「なに?」
チェシャもまた、カラーコンタクトを入れていない。
琥珀色の瞳をミケへ向けた。
「…ここの寺って、秘仏とかあんの?」
チェシャは、金色の瞳でまっすぐ見つめながらミケにいう。
「あるよ。秘仏っていうか、すげー価値があるもん」
「へぇ…」
ミケは、ちらりと敷地内を見つめた。竹林の中の彼岸花は、まだ白く咲いているが、そろそろ散る季節だろう。
「巻物とか?」
チェシャは首を振る。
「住職の部屋にある壷とか掛け軸とかは、大した事ないって…住職が書いたモンだから、価値は無いっていってた」
「芸能人のサインじゃあるまいしな」
ミケは顎に手を触れた。
「…玉屑は見た事ある?」
「まぁ、そうだな…うん」
ミケは、驚いてチェシャを見た。
「は?」
「この寺のお宝だろ?」
要するにそう言う事だ。
「お宝?…大層なもんなのか?」
掛け軸でもなく、壷でもなく、秘仏。
とっても価値のあるもの。チェシャはニヤリと微笑んだ。
「まぁ、八朔のいいたい事はよく分かるよ」
ミケは、指を三本立てた。
チェシャも、何度か指を出したり腕を引っ込めたりして、2人は何かのサインを出し合っていた。
「…了解」
チェシャは頷いた。ミケは、そう言いながら社務所から中へ入っていった。ミケは、隅々まで掃除や掃き掃除をしている中で、妙な痕跡を見つけていた。その痕跡が最近つけられたもので、偶然ついてしまった痕ではない、なにか故意的な何かだという事に気づいた。ミケが推測するに、それはここ一週間以内に一カ所づつ、つけられているような感じだった。
誰かが何かを企んでいる…
単純に推測するなら何か、利益を得る何かと考えるのが妥当。そう考えるなら、金目のものというのが最も理由としては分かりやすい。寺の賽銭や、金品を盗もうとしているならそれもまたありだが、それにしては妙に下調べが多い。
何者かが、寺で入念に何かを調べている様子だった。それも、プロの仕業近い。チェシャもそれには気づいている様子だった。だから、ミケは秘仏を聞いた。仏像は、闇市では高値で売れる。秘仏となれば、その価値はかなり高いらしい。社務所と渡り廊下で繋がっている庫裏へ入る。
「…」
ミケは掃除用具入れの中から雑巾とバケツを出した。その中に水を入れて雑巾に水をしみ込ませ雑巾をしぼったものを持って拭き掃除を始める。どうやら、泥棒はしつこく何度もこの寺に訪れているようだ。
…なるほどね。
泥棒の痕跡をミケは探す。
下見で計画を終わらせるのか、それともそのまま計画通り侵入を計っているのか…ここまで執念深く調べているのであれば、この寺の宝は、近日盗まれる可能性が大きいと思った。先ほど社務所の下に盗聴器が仕掛けられていた。
仕掛けられてから一週間くらいは経っているだろう。埃のつもり方で、大体推測を立てた。人の往来が多いところに、仕掛けられていたということは、少なからず、おごりか焦りがあると思う。そこから、推測するに、近い将来ここに誰かが侵入してくる。
「…」
ミケは、掃除をするという名目で、隅々まで雑巾がけをしながら、寺社の中を見回った。社務所に座っているチェシャは、寺を訪れる人達の中に、怪しい動きをしているものがいないかどうかのチェックをしている。おそらく、天花住職は気づいていない。
先ほどのハンドサインで、チェシャが把握している盗聴器や監視されているカメラの場所をミケに伝えてきた。ミケはとりあえず、社務所から近い駐車場が見える窓へ行く事にした。大きなイチョウの樹が葉を茂らせていて死角になって丁度良い。盗聴器の種類や電波の状況から見て、おそらく、そんなに広範囲に電波は飛ばないタイプのものだ。駐車場に車は止まっている。こんな田舎の駐車場に、端っこに1台しか止まっていない車の中に、先ほどすれ違った女性がいた。
てっきり、檀家さんかと思っていたが、どうやら、成り済ましていたらしい。あっちはミケの姿には気づいていない。
仲間があと数人はいそうだが…車の影になってよく見えない。やっぱり、あの人だったんだ。ミケは緑色の目を眇めた。
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