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金色の瞳のチェシャ猫のお話18
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「ただいまかえりました…」
明雪と花風が寺社を空けてから葬式の依頼がたて続き4日経つが、天花は職務に追われ、ほぼ寺社にはいない日が続いていた。
「おかえり」
「おかえりー」
チェシャとミケは、並んで台所に立っていつも疲労した天花を迎えた。琥珀色の瞳と、エメラルドの瞳の2人の美しい僧が、近所では、かなり評判になってきた。
「もうすぐ、みそ汁が出来るから座ってて」
「…わかりました」
天花は、いわれるままに、いつも食事をする部屋で静かに待つ事にした。
帰る時に檀家さんに捕まり2人の事について根掘り葉掘り聞かれ、エネルギーを使わされた。かなりのマシンガントークのオバさんだった。天花はため息をついた。ミケはエメラルドの瞳と上質な日本画のような美しい容姿をしている。余計なものを排除した最小限の美しさだが、その輝きは洗練されていて儚く美しい。
一方、チェシャもまた美しい。後光を瞳に宿したかのような琥珀色の瞳はまるで、光りを集めて閉じ込めたかのようだと思う。ミケに比べると、肌に透明感があり、皮膚が薄いのか、少しの温度変化で直に頬が赤くなる。最近こそ、少しづつ太り始めたチェシャだが、元々線が細いのは相変わらずで、腰周りは細いし足も天花の腕ほどもない。その線の細さが一見すると、女性のようにも見えてしまう。チェシャは、顔に華やかさがあるため、彩色画のようだ。寺社の装飾芸術には、扉や襖や梁や柱には色々な色彩が施されている。チェシャには、そう言った華やかさを感じる。特に朝廷や天皇家が寝泊まりする部屋に描かれている絢爛な金箔絵のようだ。
「…」
と、思ったが自分の好きな相手を贔屓した角度になっているようだと思い返してみて、天花は顔を赤くした。
…どんだけ、チェシャが好きなんだ。
と、自らで自らを辱める結果になってしまう。
「ゆきちゃん出来たよ」
チェシャが、腕を組みながら目を閉じて、赤面する天花を見た。
「どうしたの?顔赤いよ?」
また、琥珀色の瞳でじっと見つめられる。首をかしげている姿が、また愛らしさを増している。
「…なんでもない」
震えそうな声を何とか腹の底で押さえつけてだすと『へんなのー』といって、チェシャは台所へ行ってしまった。
「…」
全く。罪なヤツを好きになってしまったと、天花は思った。
「じゃー食べよう」
チェシャとミケが、自らの膳を運んで位置に着いた。
「頂きます」
天花の言葉に合わせて2人も両手を合わせて食事を食べる。今日のみそ汁の味が少しだけ違った。
食事は一言も喋る事無く食べ終えなければならないため、食事が終わると2人は天花の膳を下げて分担しているらしい皿洗いをミケが行っていた。天花は、自室に戻り服をとると、風呂場へと向かった。服を全部脱いで、風呂へと入る。
チェシャとミケは、本当に殺し屋なのかと疑うほど、しっかりと寺の勤めを果たしている。教えた事はしっかりと行い、それ以外の雑務もこなしている。
掃除、洗濯、食事…天花の身の回りの世話の一切を引き受け、チェシャに至っては天花のスケジュールまで把握しているため、何時に天花が帰ってくるのが分かるらしい。それに合わせて、暖かいご飯や風呂の用意など、本当に2人はよく気づいてよく働いてくれる。日中チェシャとミケが仲良く奉公している姿をあまり見られないのは、残念だが、偶に見る姿は確かにこの寺社で有名になる程の美貌を持っているなと感心する。ただミケよりもチェシャの方を若干ひいき目に見ている自分に羞恥する天花は、自分の修行不足を恥じた。
…もっと、精進しなければならない。
と、赤面する。
最近忙しく鍛錬を怠っているのは確かだ。チェシャの愚行から、瀧行も行っていない。僧侶は、どんな立場になっても修行の身。言い訳を作る事はいくらだって出来る。弱い部分を認めてからが、第一歩である。ミケが『俺がセックスできないのに、お前らだけ出来るのは納得いかない』といって、最近は、天花の部屋でいつも川の字で寝ている。ちなみに、天花を挟んで左右に2人が寝るが、2人とも至極寝相が悪いので、多いと3回くらいは夜中に目覚める。
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