アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2021年 恵方巻 ①
-
@@@@@@
チェシャはゴロンと横になっている。
天花の方へとごろごろと転がって、暇を持て余しているのを存分に見せつけている。
「ねぇ、ねぇ。ゆきちゃん」
「?」
こちらは忙しく文字を書いているというのに…
「今日って、節分だよ」
「知ってる」
だから、天花は忙しくしているのだ。
「恵方巻って知ってる?」
「知ってる」
関西の文化で、近年まで知られていなかったが、節分にその年の恵方を向いて食すといいとされる巻き寿司のことだ。
確か具材は7種類だと七福神に因んだものになっていて良いとかなんとか…
天花はあまり馴染みがないのでうる覚えだが。
「今年の方位知ってる?」
「知らない」
チェシャがなにを言おうとしているのかを察することができない。
単純に寿司を食いたいといっているのか珍しい…
と天花は思っていた。
「南南東だって」
「そうか」
天花はポリポリと頭をかいた。
「南南東ってどっち?」
「知らない」
チェシャはごろごろと転がりながら、携帯電話のアプリを起動してうつ伏せになって指をさした。
「あっちだって」
チェシャを特別構ってやることができない事は、彼自身がわかっているので、天花はチラリと視線を上げてから『へー』という生返事をした。
「南南東に向かって、恵方巻を食べるんだ」
「そうか」
天花がそう言って口だけで返事をする。
「じゃあ、ボクも恵方巻食べようかな」
「…」
チェシャが自分から、何かを食べようと提案したことが珍しくて、天花は思わず顔をあげた。
「…ゆきちゃん」
「ん?」
天花は顎を下げた。
チェシャは眉間にシワを寄せている。
「それってもしかして、老眼鏡?」
「そうだが?」
天花も若くない。
最近、近い距離の文字が見えずらくなってきて、眼鏡を作ったのだ。
つまり、思いきり老眼鏡なわけだ。
手元以外のものを見るのには適していないので、メガネを鼻先にずらしてチェシャを見た。
老眼鏡をかけていたから、焦点が少しぼやけていた。
でも、チェシャがワナワナと表情を震わせているのくらいはわかる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 92