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2021年6月雨の日の巻 ❽【完】
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「…」
また、ロクでもないことを考えているな。
と、天花は喉まで出かかって、ため息をついて腰を下ろす。
「夢の中でゆきちゃんとセックスしたの」
天花が口をつく前に天花を見つめていたチェシャが熱っぽい視線のまま近づいてくる。
「そ、そうか…」
言葉を飲み込んだ天花の座った膝の上にチェシャが強引に乗り上げる。
「ゆきちゃんが、声出しちゃダメって言うから…ボク頑張って声出さないようにしてたんだよ?」
「…」
チェシャは隠しもせずに欲情した目をギラつかせて、天花を巻き込もうとする。
勃起した性器を擦り付けるように近づいて、手を首に回して、勝手に上目遣いで見つめる。
「そしたら、ゆきちゃんがね、僕の奥に腰を強引にグリグリしてきてね…」
「夢の話だよな?」
天花はチェシャの蠱惑な瞳と目があってしまい、間近でその視線を合わせたことを後悔した。
ゴクリと生唾を飲み込む。
「そうだよ」
チェシャは、意識しているのに素知らぬふりをする天花の手をとって自らの性器に導く。先ほど、遠くで誇張しているのを指摘した天花の表情が、そこに触れた瞬間に反射的に動いた。
まるで湿っぽい猛獣の鼻先を柔らかな毛並みが掠めた時のようなむず痒さと、繊細な毛筆が張り付くような錯覚に何度も湿っぽい鼻を手で掻き毟る時のような焦燥感にかられる。
「おい」
天花は、こみ上げる熱い何かをしっかりと意識して飲み下した。
「なに?」
手中の上にいるのにもかかわらず抵抗する天花に苛立ちの目を向けるチェシャをじっと見つめる。
「今、なにしようとしてる?」
天花は薄々気づいてはいたが、それが違うとチェシャの口から出ることを望んでいた。
「セックス」
「アホか」
天花はチェシャの性器から手を離して、か細い肩を押した。
離れて、チェシャの瞳から視線をそらすと、天花の囚われそうになっていた心が戻ってくるような気がした。
「何時だと思ってんだ」
まだ、人の往来がある。何より昼間だ。
天花は、なんとか理性を取り戻そうと必死にチェシャと自らを説得する。
「でも、こんなに外雨降ってるし、少々ゆきちゃんが激しくても誰もわかんないよ」
チェシャの言葉に天花はほんのり顔を赤くした。
おそらく、自らの痴態をリアルに想像してしまったのだろう。
確かに、外の雨は激しく時折風の煽りを受けて雨戸を雨が吹き付けるような音がする。
「やめなさい」
天花の声は、呆れて牽制させるようなものではなく、どちらかといえば焦れているような声だった。チェシャは、そこに付け入る隙を見つけて迫る。
「ゆきちゃんエッチしよーよー」
チェシャが、天花の足に自らの性器を擦り付ける。
ボクサーパンツの伸縮性のある薄い布越しでは、温度も硬さも生々しく天花に伝わる。チェシャは腰を前後に動かして、天花の欲情を煽る。
「やめなさいっ」
天花はチェシャの細い腰を掴む。
「えー…」
動きが止まってチェシャが天花を見つめる。
すると、天花は言いづらそうにいう。
「わかった…よ、夜するから」
できれば明日に差し支えるようなことは控えたいのだが…
あえて自分から約束するようなことは普段しないのだが、譲歩として天花はそういった。
「やだ」
「…」
はっきり言うチェシャを天花はみた。
「今したい」
「…」
チェシャは、天花を困らせたかった。というよりもからかいたかった。
一瞬、天花が困った顔をしたので、チェシャはそれで満足をした。
「えへへ」
チェシャが綻ぶように頬を緩め、抱きついてくる。天花の胴に細い腕が強く回る。
天花は自分が揶揄われたことに気付く。
「じゃあ、夜激しくして?」
チェシャは、天花に抱きついて、密着した作務衣に染み込んだ香のかおりを吸い込んだ。甘い白檀と高級な沈香の香りが混ざっている。それを燻らせた煙が、静かに幾重にも重なって染み込んで、水では流せないほど布に入り込んでいる。
それを普通の人は『線香くさい』と言って詰る人もいるだろうが、そんな奴は死んで後悔すれば良いとチェシャは思う。
布に染み込んだ香りの奥に、天花の匂いと温度を感じてチェシャは頬をすり寄せる。
「チェシャしだいだな」
天花は、甘えてくるチェシャの背を撫でる。
だいぶ肉付きが良くなったものの、まだ背骨は浮いている。
「じゃあ、良い子にしてよー」
良い子にしていればご褒美がもらえるなんて、そういうことじゃないんだけどな…と、天花は思ったがチェシャが幸せそうに『えへへ』と笑うので、余計なことは言わなかった。
外の雨戸を叩く水の音は相変わらず激しく、雨粒を叩きつけるようだった。
ー終ー
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