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●●しないと出れられない部屋の巻⑷※
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「…」
目の前のチェシャの体をみた天花は目を見開いた。
『ひいた?』と彼が口にしたのは、確かに当たらずとも遠からずで、天花はかなり驚いていた。チェシャの瞳は、相変わらず闇を宿していて天花を見つめている。
「ここ1週間くらい、変態に監禁されてたんだよね…」
天花の目の前で全裸になったチェシャの体は生々しい傷跡が無数についていた。
首を締められた痣が首に残り、体には鞭で叩かれた無数の赤い痕と縄で拘束されたのであろう痕。それから手首を拘束され、酷く抵抗したようなものと足首も同様に擦れたような痕。それから、腰回りには被れたような痕が鼠蹊部の方へと続いていた。彼の体に残る元々のケロイドや手術痕も相待って、見るに耐えない状態だった。
「…だ、大丈夫だったのか?」
こんなに身体中に様々な痕が残るほど、チェシャの体が蹂躙されたことを天花は案じていた。
「別に…殺す気はないんだ。ただ、性欲を満たしたいだけだから…」
なんの色も宿さない死人のような瞳のチェシャがハキの無い声で呟いた。
彼の仕事に対して口を挟むつもりはない。
あーだこうだと、天花が口を挟んで良い方向へは決して行かないから、天花はチェシャのそれに対しては決して諭したりしない。もしチェシャの体がそれで深く傷ついているようなことがあったとして、決して同情もしない。
「…そうか」
天花は、命を取られるようなことがないならそれでいいと安堵する。
「なんもないの?」
チェシャの瞳は相変わらず鋭く痛く、一瞬でも心に隙間があれば入りこまれて、恐怖心を掻き毟られる。
彼のことを知り、慣れていなければ、おそらくこの空気に飲まれて窒息させられていただろう。
周りの空気をも支配して息の根を止めかねない。『本物殺し屋なのだ』という安っぽい言葉で片付けるにはあまりにもお粗末だが、今のチェシャは相手に触れずに殺すことができそうなほど殺気立っている。
けれど、天花は一切怯まずにその琥珀色の瞳を見つめ返す。
「なんもないって、なにが?」
「ボク、他の男に犯されたんだよ?1週間くらいずっと…」
「だからなんだ?」
嫉妬してほしいと遠回しに言っているのだろうか。だとしたら、天花は思う。
「仕事なんだから、俺が嫉妬しても意味ないだろう」
ある意味、無慈悲な天花にチェシャはいう。
例え、天花が嫉妬して相手の男に憎しみを向けたとして、チェシャに『殺し屋をやめてくれ』というと思っているのだろうか。もし本当に天花がそれを言ったとしてチェシャはイエスというのだろうか。
「じゃあ、ボクがこのまま知らない男に犯されもいいっていうの?」
縛られて、繋がれて。
鞭で打たれて、犯され続けた。自己の快楽を押し付けられた成れの果て。
「今度は、もっと酷いことされるかもよ?加減を間違えた変態に殺されるかもしれない…それでもいいの?」
相手に殺意があるかとか、これ以上されたら死ぬとか…
そういう判断は、チェシャの方が長けていると天花は思っている。
だって、彼は殺し屋なのだから。
天花よりもずっとそういう感性は鋭いはずだ。
「もし、それでお前が死んだら俺が経を上げてやるし、戒名もつけてやるよ」
「…」
チェシャは、下唇を噛んだ。
自らを自らで否定するチェシャを天花が肯定するはずがないことはわかっていた。
「だから、これ以上お前自身が傷つくようなことを言うのはやめろ」
いつだってチェシャは、天花よりも自分が傷ついた表情をする。
常識に囚われ、普通であることを誰よりも気にしているのはチェシャの方だ。
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