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●●しないと出れられない部屋の巻(11)
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天花はぐったりと意識のないチェシャの体を抱き寄せる。
全身が精液ではない、チェシャが吐き出した体液で汚れていた。透明で匂いはない。チェシャの体が、チェシャの意識の範囲を超えて吐き出したものといえば、確かにそうだった。
天花は、小さな頭を腕に乗せると、チェシャの髪が張り付くほど汗をかいている事に気づいた。不健康そのものの痩せ細ったチェシャの体が、熱を放出し体を覚まそうと汗を流すほど、体温が上がったのだろう。前髪をかき分けて耳にかけてやる。
よく見れば、チェシャの顔面は水分でグシャグシャだったので、無骨な指の腹で睫毛もろとも拭ってやる。そして、鼻の下や口の端の濡れた水分も垂れ流していたのだという事に気づいた。
「…」
人として、ちょっと酷く抱きすぎたかもしれない。
いくら、チェシャが『酷くして』とか『激しくして』というタイプだったとしても加減というものがあるのだから、人間として最低限持っているモラルを逸脱してはならんだろうと、自分を戒めた。
天花は、脱いだ服を手探りで引き寄せて綿の部分で改めて優しくチェシャの顔面とともに全身も拭ってやる。
「…んっ」
チェシャが、くぐもった鼻にかける甘い吐息を漏らす。
少し声がかすれていた。あれだけ、嬌声をあげれば当然か。
天花はチェシャの寝顔を見つめていた。
同時に、先ほど飲み下した熱湯のような感情を少しずつ冷ましていた。
男という生き物は、一度達してしまうとかなり冷静になってしまうというのは本当で、さっきまであれほど感情が乱れていたことが今は不思議なくらい落ち着いていた。
やっぱり、嫉妬してるのかもしれない。
チェシャは天花と他者を比べることはきっとしない。チェシャにとって、他者とは『天花以外の人間』の事だろうと思っていたからだ。
そうでなければ、チェシャはきっと天花の元へはこない。リスクやペナルティを犯しても、繰り返し辺鄙なところへ天花を求めて来るのだ。相当なメリットがなければ、そう何度も訪れることはしないはずだ。
天花はそれを知っていたからこそ、チェシャは自分と他者を比較なんて絶対にしないと思っていたのだ。天花は真意を疑ってしまった。
チェシャは天花に、不満を吐露しただけで、決して他者を押し付けたのではない。例えるなら、ご近所の井戸端会議で聞いた話を『●●さんのご主人は子供の面倒を見てくれていいわねー』とか『▲▲さん宅は結婚記念日をお祝いしたんですってー』とか『■■さん家は夏休みに旅行に行くんですって〜』とかを、自分の家に帰って自分の旦那に話す主婦の嫌味と同じようなものだろう。
真意としては2通りで、旦那を腐しているパターンと、悪気0で世間話のパターン。チェシャは後者だったのだろうと天花は思う。
「はぁ」
天花はため息をついた。
悶々としている状態で、チェシャの手中にまんまと感情をかき乱されたといえばだいぶお粗末な理由で、やっぱり修行が足りないのかもしれないと天花は思う。
日々の業務に忙殺されて、その中に天花の課題があると行をこなしていたが、なあなあと妥協して、こなすだけで満足していたのかもしれない。
1つ1つの勤行を感謝してこなしていると思っていたが、もしかしたら、そんな気持ちすら日常に流してしまっていたんじゃないかと落ち込む。
自分はとてつもない修行を終えた偉い僧侶であるという傲慢になっているつもりもなければ、自負を抱いているつもりはなかったのだが、チェシャの言葉に感情が乱れたということは、きっとまだ若輩者である自覚が足りない証拠なのだろうと自らの心に問いかける。
「…んんっ」
チェシャがうっすらと目を開けて天花を捕らえる。
何度かしばだたせたあと、プカリとあくびを浮かべて、金色の瞳の細める。
「えへへ」
体の向きを変えてチェシャは天花の体に腕を回した。
「すまん」
チェシャは天花の言葉に顔をあげた。
「ん?」
首を傾げて体を密着させる。
「そのー、やりす…」
天花の口をチェシャの手が塞いだ。
「やだ」
「?」
チェシャは、少し赤い瞳に焦りのような感情を織り混ぜていう。
「反省しちゃダメ」
「…」
チェシャは天花の口から手を離す。
そして、甘く表情を緩ませて微笑む。
「ねぇ、ボク潮吹いてた?」
チェシャは、天花に満足そうに尋ねる。
「あ、ああ…」
「そっか…えへへ」
普通、こういうのって加虐する側が『潮吹けた偉いね』と言って嬲るのが普通なのではないだろうか。加虐される側の表情は、泣いてグシャグシャになるか、羞恥心で死にそうになっているか大体どっちかで、天花の想像の範囲外の楽しみ方がどういうものかはわからない。
というか、趣味の範囲なので天花の想像の域を出ているためどれが正解なのかがいまいち理解できていない。もしかしたら、天花がSMプレイものの映像に感化されすぎているのか、知識が薄いのかなのかもしれない。
「潮吹いちゃったんだ」
「…」
チェシャの声は弾んでいた。
なんて答えたら良いのかはわからなかったので、とりあえず閉口する。
昇天しそうなチェシャの性器を無理やりしごいて、快楽を与え続けて彼の体が何もないと訴えて吐き出した透明な液体は、度を超えた刺激を加えたからだ。
「ゆきちゃんに中出しされちゃったし…」
「…」
えへへとチェシャは満足そうに頬んでいた。
彼が満足ならそれでいいと、天花は思うことにした。
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