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第2章–16 本当は、きっと…好き
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「すまない。こんなプライベートな話。バカみたいだ。まさかここでするとは思わなかった。おれらしくもないな」
「そんなことはないです。ただ、おれでよかったのかどうか」
どうしてなのだろうか。
田口に。
出会って1か月少しの人間に、こんな話をするとは思いもよらなかった。
いや。
誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
そう話ができるほど親しい友人もいない。
昨日から、イライラしていて収まらない気持ちが和らぐのは、気のせいではない。
気の利いた事を言う男ではないが。
一緒に困った顔してくれる田口は、いい奴だということはよく分かる。
お人よしなのだろうな。
こんな突拍子もない話を聞いても一緒に悩んでくれるのだ。
保住は笑む。
「すまない。ありがとう。田口」
保住の笑顔は、田口にはきつい。
だらしのない格好の、生気のない顔付きの彼が、時折見せる笑顔は、ぱっと周囲を明るくする。
いや、田口の心を彩る。
なぜだろう。
目が離せないのは。
嫌いだからなのに。
いや。
本当は嫌いじゃない。
きっと。
好き。
彼から目が離せないのは、すごく興味があるからだ。
田口は、保住から視線が外せない。
「いえ。おれこそ。ありがとうございます」
田口がそう言ったとき。
扉が開いて矢部が顔を出した。
「あれ~?今日は珍しいコンビが一番乗りですね」
「おはようございます。矢部さん」
保住に続いて田口も「おはようございます」と挨拶をする。
「おはようございます」
矢部は、にこにこだ。
「企画書詰めていたんですね」
「はい。書き直しですけど頑張ります」
「で、何点だったの?」
田口は、苦笑いだ。
「10点です」
「まじか?嘘でしょう?最高新記録!」
半分、呆れられているけど別に悪い気持ちにならないのはなぜだろう?
「どん底を見るのは、いいことだな」
矢部は、苦笑して田口の肩を叩いた。
「そうですね」
何もこだわることはない。
変わるのだ。
全て吸収して、自分は変わる。
もっと上に行けるように。
保住のサポートが少しでも出来るようになりたい。
そう思った。
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