アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第3章–10 クズが
-
止めるみんなを振り切って、田口は事務所を出ると、澤井の部屋をノックする。
「誰だ」
「田口です。お話があります」
門前払いか?と思ったが、澤井はあっさりと通してくれた。
「入れ」
「ありがとうございます」
中に入ると、いつもと打って変わって、彼の机の上には書類が山積みだった。
珍しいことだ。
「くそっ、意味が分からんな。こんな書類作りやがって、クズが」
彼は文句を吐くと、田口を手招きする。
「おい、お前。この企画書を説明しろ」
「え?!は、はい」
駆け寄る。
先程、渡辺が出した企画書。
矢部が書いたものだ。
話を聞いていてよかった。
田口の説明に澤井は頷いた。
「なんだ、そんな話か。じゃあ、そう書けよ!馬鹿者。返却。書き直し」
「すみません」
「お前のではないのだろう。自分のことではないところで謝罪するのは、何の意味もない無駄なことだ。やめろ」
「はい……」
澤井は、頭をかく。
「通訳がおらんと、こうも仕事が滞るものか……」
「通訳……」
田口が呟くと、澤井はそこで初めて田口を見る。
「で、なんだ。お前」
「振興係の田口です」
「そんなものは分かっている。何の用だ」
「仕事とは関係ないのかもしれないですが……」
「グズグズ言うのは嫌いだ。要点を言え」
澤井は、真っ直ぐに田口を見る。
「係長の容態が知りたいのです。局長ならご承知なのではないかと」
そんなこと教えてくれないんじゃないか?
そう思った。
しかし、澤井はあっさりと答える。
「明日退院だ」
「本当ですか?」
「嘘言っても仕方あるまい。今回はやっと戻ってきた感じだな。一週間は自宅療養を言いつけたが、多分、来週から出てきてしまうだろうな」
保住らしい。
「今回ばかりは、ダメージが大きい。復帰してもお前がきちんと管理してやれ」
「おれですか?」
「他のやつよりは使えそうだ。体型からしてスポーツをしてきたのか。自分の体の管理の術くらい心得ているだろう?」
「剣道です」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 344