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第6章ー5 親衛隊の任務
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「渡辺さん、そんなに脅したら田口がかわいそうですよ」
保住はおかしくて笑っていた。
おかしくて、おかしくて仕方がないと言うところか。
涙を拭い、口を挟む。
「脅しなんですか?」
不本意。
騙された感が強い。
しかし、渡辺は首を横に振る。
「おれたちには怖くないけど、係長が心底、嫌な思いしているじゃないですか」
「へ?どういう?」
保住は、その話題には触れて欲しくないようだ。
顔をしかめる。
「その話は無しにしましょうよ」
「でも、田口だって知っておかないと。親衛隊の一員であります」
谷口は、啓礼をしてから田口を見る。
「県の教育長大友さんは、保住係長のファンクラブだからな」
「ファ、ファンクラブ?」
「そうだぞ。受付していると、係長の手を握るし。懇親会では、必ず係長の後をくっついて歩いているからな」
矢部も口を挟む。
「そんな事ってあるんですか?」
渡辺が説明を付け加える。
「質が悪すぎる。県のトップだぞ。おれたち市の職員が太刀打ちできる訳なかろう。二年前も一度、手伝いをさせられた事があってさ。その時に随分と係長がお気に召したようだ。今回も来るだろうし、あれ以上の接触を図って来るかも知れない。おれたちには、研修会を成功させるとともに、係長を守るという使命もある訳だ」
「渡辺さんは、大げさですよ。そんな事ありませんって。たまたまですよ」
「係長。そんな隙だらけのことを言っているから、付け込まれるんですよ」
「そうです。しっかりして」
「おれたち、頑張りますから。な、田口」
三人にそそのかされて、田口も大きく頷く。
「おれが体を張ってでも、守り抜きます」
「おお!鉄壁!」
「すげえディフェンダーだ」
どんと胸を張る田口が頼もしい。
が、保住は苦笑いだ。
「男に守られるほど、落ちているつもりはないがな。それよりも、さっさと仕事に戻りましょう。いろいろと仕事詰まっていますよ」
「はーい」
せっかく面白い話だったのに、と谷口は呟く。
しかし、田口は本気モードだ。
そんな危ない輩とはどんな奴だ。
さしずめおばちゃんだろう。
ずけずけと物言いをする輩か。
田口は、自分の仕事が出来たとばかりに、真面目な顔で仕事に戻った。
その様子を見ていた保住は内心笑う。
単純で。
すぐにみんなの話題に乗せられる。
素直。
なのだろうな。
また楽しい一年になりそうだ。
そんな予感がした。
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