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第10章ー2 お友達
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行政の資料は、字が細かくて嫌いだ。
パワポ形式の、びっしり書かれた資料を眺めて、半分飽き飽きする。
隣の他の市町村担当者は熱心にマーカーを引いたり、読み込んだりしているが。
退屈。
欠伸をして、背伸びをした。
「おい。さぼってもいいが、目立たないようにしろよ」
隣にいた、澤井に注意される。
「すみません……」
首を引っ込めると、彼は腕組みをして、じっと説明者を凝視したまま、軽くため息を吐いた。
「毎年毎年、県の担当者の話は変わり映えもせずつまらないものだ。しかし、出席しない訳にもいかん」
「局長もつまらないんじゃないですか」
「だからと言って、お前みたいに堂々とサボるほど、社会性が欠落はしていない」
「すみません。社会性なくて」
保住は資料をペラペラと眺める。
「これって、先週、国から出された課長会議の資料ですよね?別に伝達しなくても読めば分かりますけど」
「奴らの仕事だ。そう言うな。聞いてやれ」
「こんなことしているなら、仕事していたほうがマシですよ」
「そんなことは言われなくても分かっている」
無駄か。
ここで言い合いをしても始まらない。
仕方なく、黙り込んで話をしている職員を見つめる。
今年、担当者が変わったようだ。
若い?
自分と年の頃は同じだろうか。
澤井のようにがめつい親父たちに睨まれても、涼しい顔で資料を読んでいる。
少しは出来る男なのだろうか。
前職の担当者はなんという名前だったろうか。
眉毛の細い。
神経質そうな男。
えっと。
えっと。
そんなことを考えていると、ふと、担当者が資料をテーブルに置いた。
『ええっと』
男は面倒臭そうな顔をする。
会場が一瞬、静まり返った。
『あの、これ、読めば分かることばっかりで、ちょっとつまらないので……』
男のコメントに、会場が騒然となった。
保住は、眠そうにしていたが、面白いとばかりに顔を上げる。
自分と同じ頃の男は、丸顔童顔。
ちょっと同じ匂いがするタイプかも。
そう思う。
小柄で細身。
眠そうな目をしている。
『あの、この資料はご覧頂かなくて結構です。ここからは、ちょっと短めに私の言葉でご説明をさせていただきます』
ざわざわしている会場内。
澤井は笑いだす。
「お前のお友達のようだ」
「そうですか?おれ、さすがにそこまでは……」
「するだろうな」
「……」
しそうな気がして、保住は黙り込んだ。
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