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第12章ー2 ボス戦 三回戦
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「ここは、話にならん。どういう意図があるのか?」
澤井の問いに、田口は答える。
「今回の企画は、星野一郎のドラマ化を目指したものです。ドラマ化に一年ではこぎつけられないので、三カ年計画としております」
田口の返答に、澤井は馬鹿にしたような顔をする。
「気の長いことばかり言うな。市民から『まだ取り組んでいるのか』『やる気なんてハナからないのだろう』と苦情が出る」
「しかし、実現可能なものにするのであれば、それ相当の準備とPRが必要かと思われます」
田口は、真っ直ぐに澤井を見つめる。
彼は、椅子にもたれたまま、それを見返した。
「それがこの計画か?生温いな。やるなら全力でやれ。やる気が見て取れない」
「生温い……ですか」
「そうだ。推しが足りん」
澤井は詰まらなそうに、企画書を投げ捨てて寄越す。
バラバラに床に落ちた書類を拾い上げ、それから頭を下げた。
「申し訳ありません。再度、提出させていただきます」
「期限は?」
「今週中に」
「遅い。明日だ」
田口は、少し間を置いてから答える。
また、無茶を言ってくれる。
「承知いたしました」
再び頭を下げて部屋を退室しようとすると、澤井が視線を向けてきた。
「保住とはどうだ」
一瞬、言葉の意味を理解しようと動きを止める。
そして、澤井を見る。
「何もありませんが。どのような答えを、期待しておられるのでしょうか?」
「そうだな。玉砕したとか、そんなところか」
「おれは、気持ちを打ち明けるつもりはありませんので、そのご期待には添えませんね」
田口の回答に、澤井は笑う。
「臆病者め」
「臆病で結構です」
「つまらん男だ。話すだけ無駄」
「失礼します」
田口は、澤井の部屋を後にした。
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