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第13章ー11 失ったものの代償
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それから三日後。
空いている田口の席が当たり前のようになった頃。
「係長、やっぱり田口を呼び戻しますか?楽曲もカナメですけど、人がいないのは結構、堪えます」
渡辺の申し出。
渡辺が主語のように見えるが、本当はこの人の為。
当事者以外は理解していることだが。
目の下にクマを作っている保住は、顔を上げる。
「戻す気はありません。申し訳ないですが、もう少し堪えてください」
「おれたちはいいけど……」と矢部と谷口も顔を見合わせた。
田口に依存していた部分が多い。
声をかけると、パパッとやってくれる下っ端は重宝するものだ。
特に彼がいなくて滞っているのは、保住その人だ。
毎晩、残業しているようだし。
「保住、ちょっと来い!」
この呼び出し。
「聞こえんのか!」
「はい」
仕事も途中に、澤井に呼ばれて席を立つ。
悪態や嫌味も出てこないのか。
黙って首をかきながら、事務室を後にした。
「かなりのオーバーワークじゃないっすか」
「だな」
「結構、頑張っているつもりなんですけど」
「おれたちがやっても結局、見直してるからな。時間がかかる」
渡辺は、ため息を吐いた。
田口が来る前はこんなだったか?
思い出せない。
だが、ここまで酷かったかな?
保住の能力が下がったのか。
いや、一度覚えたものを失うと、代償は大きいのだろうな。
「まだかよ。神崎先生……」
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