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第14章ー8 沈み込む心
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「飲み過ぎました」
圭一郎に勧められてワインを何本開けたのだろうか。
軽く気分が悪い。
「飲んだフリでもしておけばいいものを」
澤井はそうは言いつつ、断れない状況であったことも理解している。
「随分、気に入られたものだ」
「理解できませんね。天才と奇人は紙一重。目の当たりにしました」
「それは同感だな。変わり者には違いないが、我々の救世主でもある」
「はい」
ミネラルウォーターを渡されて、少し口に含んだ。
「しかし、やはり合わん。練習に、本番に。マエストロ担当はお前がやれ」
「面倒ごとはおしつけですか」
「そういう事だ」
平日の夜の車内は静か。
酔っ払って寝ているサラリーマンも多い。
窓際で寄りかかっていると、ふと澤井の腕に引き寄せられ屈むようにキスをされる。
「な、こんなとこで……」
軽いものでも、こんな場所では流石に憚られる。
「寝ておけ。疲れたろう。今日は自宅に送ってやる」
「嫌です。泊まられるのは勘弁です」
「泊まるとは言っていないが?そうか。素直ではないな。泊まって欲しいのだな」
腰に回ってきた手が、体に触れるとゾクゾクする。
「澤井さん……」
「大丈夫だ。安心しろ。こんなとこでやるわけなかろう」
疲れと安堵感。
一気に瞼が重い。
保住は、澤井の肩に頭を預けて目を閉じた。
「頑張り過ぎだ。馬鹿者が」
そう聞こえた気がするが、気のせいかも。
遠のく意識を引き戻すほどの力はない。
そのまま深い眠りに落ちた。
結局。
澤井とは付き合っていると言っていいのだろうか。
彼は既婚。
不倫ということになるのだろうか。
『あいつとは仮面だ。関係ない』
彼はそう言う。
だけど、そんなことはどうでもいいことで。
澤井と付き合うという事自体が大問題な訳で。
「はっ……ッ、澤井、」
休め。
寝ていろ。
そんな事を言っていたくせに。
衣擦れの音。
荒い息遣い。
「お前の中は気持ちがいい」
「や、やめてください……ッ」
澤井の体力には、正直付いていけない。
ただ。
こうしている間は、田口の事から逃れられる気がするのだ。
後ろから繋がったまま、澤井は保住の顎に手を当てて上半身を引き寄せた。
「あ、ああ……んっ」
深く、更に深く。
突き立てられたものが存在感を増す。
「いやらしい声が出せるようになってきたな。いい子だ」
ねっとりとした舌で耳を嬲られると体が震える。
嫌なのに。
田口を思い出したくなくて澤井を求める。
「こんなお前を拝めるのは、おれだけだと思うと、ますますいじめたくなるな」
メチャクチャだ。
もう。
最悪。
田口になんて顔向けできる訳ないじゃない。
人と交わって後悔ばかり味わうなんて。
苦しいのだな。
他人事みたいに、保住の心は彷徨っている。
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