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第14章ー15 仕事とプライベートと
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手際良く。
ただし、相手に不快感を与えないように。
サクサクっと挨拶まわりとお願いごとの打ち合わせをこなす。
保住はとても疲れているようで、移動の間は書類を見ているか、目を閉じていた。
「楽器店は、スタッフの増員をお願いした方が良さそうですかね?」
ハンドルを握りながら、田口はつぶやく。
シートに体を預けたまま、保住は軽く息を吐いた。
「オケ専属のスタッフもいるのではないかと思う。有田さんに確認をしておかなければならないな。他にオケのサポートとは、何が必要なのだろうか?」
「水分補給や食料の調達、でしょうか?」
「確かにな。それは大切だ。渡辺さんが出てきたら相談しておけ」
「承知いたしました」
仕事の話だと、こんなに出来るのに。
窓の外に視線を向ける保住。
こんなにそばにいるのに。
遠い。
澤井のものになってしまったのか。
信号で停止した車は静かだ。
時間は17時を過ぎた。
元々、渡辺とも戻りは18時過ぎ予定だった。
最後の訪問場所である印刷会社を目指して、車は走る。
だんだんと帰宅時間と重なり、道路は渋滞気味だ。
田口を見ようとしない保住。
もどかしい。
左手をそっと伸ばして肩に触れる。
保住は、弾かれたように田口を見た。
「何?」
「すみません」
「……」
「係長……」
「青だぞ」
「すみません」
田口は諦めてアクセルを踏んだ。
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