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第15章ー2 手を繋ごう
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「正月は実家か?」
退勤の為にI.D.をかざした保住は、田口を見上げる。
今日は、妙に疲れているようだ。
さすがの田口も顔色が悪い。
彼の場合は、仕事と言うよりは、プライベートで悶々としているのだが。
「休みがあまり取れなそうなので、帰るのは諦めました」
「帰ればいいのに」
「雪割は豪雪ですから。一泊二日とかのレベルなら、帰らない方がいいくらいなんです」
「そうか。雪の時期に足を運んだことはないからな。地元民がそう言うならそうなのだろう」
一人寂しい年越しか。
そう思う。
保住は、言いにくそうに田口を見た。
「何も予定がないなら付き合え」
「え?」
「大晦日。保住の一族で集まるようだ。祖父が、お前を気に入ったようで連れて来いと言う」
「おれ、ですか?一族なのに。部外者すぎません?」
「まあ、部外者と言うか他人だな」
「ですよね」
二人は、庁舎の外に出て立ち止まる。
冬の夜空は澄んだ空気のおかげか。
キラキラと輝いて見える。
雪が降らない夜は、冷え込みが酷い。
こうして立っているだけで、足先まで冷えた。
しかし、暑さや寒さに鈍感な保住は気にならないようだ。
「いいのでしょうか?確かに梅沢での一人年越しですが……」
「おれが来て欲しいのもある」
保住は、言いにくそうに視線を逸らした。
「え?!」
「何度も言わせるな」
ぷいっと顔を背けて歩き出す。
「い、行きます!もちろん!」
田口は、慌てて保住の後を追う。
「嫌なら別にいいのだ」
「嫌じゃないです」
「そうか。……すまないな」
「いいえ」
田口は嬉しい気持ちになって、そっと保住の手を取る。
少し驚いたように顔を上げた保住。
だが、そのまま田口の手に指を絡ませる。
「我儘ばかりだ。すまない」
「気にしていません。むしろ嬉しいです」
小学生みたいな保住と、中学生みたいな田口だ。
まだまだ手を繋ぐことくらいしか出来ないけど、いいか。
田口は、そう思うと嬉しい気持ちになった。
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