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第16章ー9 落ち着け
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「ダメです!ダメ!絶対にダメ!!」
「田口!!」
バタバタとした騒ぎはこりごりだ。
頭が痛む。
腰の痛みから来るのだろうか。
「田口、離せっ!」
保住は、田口に必死に訴える。
しかし、彼は我を失っているのか。
全く保住の声が耳に入っていない様子だ。
無我夢中な田口は、ホールの控え室の1つに保住を下ろした。
「落ち着け!田口」
混乱の色を呈していた田口の頬を両手で挟み、視線を合わせる。
「おれを見ろ。大丈夫だ。大丈夫。ここにいる」
日中だが、防音室なので窓がない。
薄暗い控え室。
間接照明の橙色のライトだけが頼り。
刺激が減って、田口の混乱も治ったのか。
荒く呼吸をしていたが、しだいにゆっくりとした呼吸に戻る。
「係長……」
視線もあちらこちらに向かず、まっすぐに保住を見据える。
「田口」
そっと保住の唇が田口の頬に触れた。
冷たい。
田口は目を閉じる。
「すみません」
「お前らしくもない」
「申し訳ありません。ですが。あなたになかなか触れられないのに。他の人が触れるのは許しがたいのです」
自分の頬に触れる保住の手に、両手を添えて包み込む。
「なら、触れればいい。お前に触れられるのは嫌ではない」
「痛みもあるのに。負担をかけたくありません」
「構わない」
熱っぽい視線に見据えられると、我慢できない。
保住の高さに合わせるように屈み込み、そのまま口付けを交わす。
頬に触れた時もそうだが、保住の唇は冷たい。
「ん……っ」
「保住さん……っ」
挿し込んだ舌で歯牙を撫でると、保住の身体が震えるのが分かる。
「ッ……んん」
角度を変え、息を継ぎながらもキスは止まない。
保住の手が、田口の腕に添えられると、ますます気持ちが昂まる。
腰に添えた手は、そのまま保住の身体をなぞる。
「た、……っ、田口!」
「はい!」
もっと。
もっと。
そう思った瞬間。
保住の手に遮られる。
「触れてもいいが、今は仕事中だ……っ」
「そうでした。つい」
「終わったらいくらでもしてやる」
「本当ですか?!」
田口の目が、キラキラと輝く。
なんだか嫌な予感。
保住は、付け加えた。
「加減してくれ。おれは病人だ」
「そうでした……でも、わかりました!頑張ります」
腰に回ってきた腕で支えられると、身体が楽になる。
澤井にやられた時のようだ。
軽く目眩を起こしていた意識が少しだけ、はっきりとする。
「保住さん、相変わらず熱ありません?」
「もう少しの辛抱だ。これが終わったら、きちんと療養するから。黙っておけよ」
「しかし」
保住は、田口の口に指を当てる。
これ以上は言うなと言うことだ。
「頼む。おれの好きにやらせてくれ」
「分かりましたが、あの」
田口は、言いにくそうに呟く。
「何だ」
「おれの側にいてください。何かあったらすぐに止めさせます」
「分かった」
大仕事は、これから始まるのだ。
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