アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
03 風邪引き1
-
うつらうつらしていた。
なんだか冷える夜だった。
まだ降り続いている雨音もうるさいくらい響いていた。
耳がいいのも考え物だ。
何度か寝返りを打っては見るものの、寝付けないことに変りはなかった。
寝ることを諦め、瞳を開ける。
真っ暗だが、ここはいつも自分の寝ている場所ではないことがよく分かる。
自分の部屋ではない匂い。
間取り。
寒くて毛布を引き寄せたが、布団がないからやっぱり寒い。
ごろごろしてみてから身体を起こした。
「ん?」
なんの音だろう。
息苦しいような呼吸音が聞こえた。
「熊……、蒼?」
枕元に置いた眼鏡を取り上げる。
そして、ベッドに寝ている蒼を見つめた。
よく見えない。
室内の電気のスイッチはどこだったろうか?
手探りで探し、スイッチを入れる。
暗闇になれた視界は妙に明るくて、何度か瞬きをした。
「蒼」
彼は真っ赤な顔をしていた。
息遣いが荒い。
体調が思わしくないってことは一目瞭然だった。
「蒼、大丈夫か?」
額に手を当ててみる。
ものすごく熱かった。
普通の人間の体温ではありえない。
やっぱり無理だったようだ。
関口は雨には濡れたものの、蒼が傘を差していてくれたので濡れ具合は軽度だったが、彼はずっと雨に濡れていたに違いない。
無理しちゃって。
「寒い……」
ふと蒼の口から洩れた言葉。
「苦しい……」
そっと伸びてきた手が関口の袖を握る。
周囲を見渡しても彼を温めるような物は見当たらないし。
仕方ない。
関口は、彼の腰に手を回してぎゅっと抱き寄せた。
「熱が上がりきるまで抱いていてやる」
「……関口」
関口の胸に顔をうずめ、蒼は呼吸をする。
本当に苦しそうだった。
風邪でこんなに苦しそうにしている人を見たことが無い。
どうして良いか分からず、戸惑っているのが本当のところだ。
だけど、今の自分に出来ることはこれくらいしか思いつかない。
彼にとって、いいのか悪いのかは分からないけど、とりあえずこうしていよう。
もう少しすれば熱も上がりきって苦しいのからは解放されるだろう。
そう信じて待つしかなかった。
深夜三時を過ぎて、熱は上がりきったようだ。
蒼の震えは治まり、今度は身体がぽかぽかして汗をかいていた。
隣に添い寝をしていた関口は、ほっとする思いだ。
彼が安心できるように規則正しく身体をトントンしてあげる。
「まるで母さんだな」
自嘲気味に笑うと、蒼は朦朧とした中で関口のシャツを握り締める。
「ごめんね……迷惑ばっかり」
「気にするな」
自分は好きでやっているのだから。
放っておけないのだから。
蒼のこと。
それにこういうシチュエーションは嫌いではない。
笑顔を見せてやると、彼は安心したのか。
瞳を閉じて息を吐いた。
ずっとこうしていてもいいかな?
ふとそんなことを思い更におかしくなってしまう関口であった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 869