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04 雨の日の再会7
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「市民オケの練習が2日。それに日曜日のそれ……。大変だよね。こっちに住んじゃえばいいんじゃないの?それとも東京にいなくちゃいけない何かがあるの?」
蒼は指を折って数え、首をかしげた。
「おれだってこっちにいたいのは山々だ。知っている人も多いし、友達もいるから、こっちのほうが落ち着く。だけど、東京にいる理由はあっちを拠点にしているプロオケに所属しているってこと。あっちの練習だって馬鹿にならない。そして、練習場所なんだ」
「練習場所?」
「この世界は練習に始まり練習に終わるんだから。思い切り弾ける場所がないと困る」
意外だなと蒼は思う。
こういう男でも、努力は欠かさないと言うところなのだろう。
彼の腕前は分からないけど、なんでもすいすいこなしてしまうような雰囲気の関口からは「努力」と言う言葉が無縁だと思っていたから。
音楽に対する姿勢は真面目なのだろう。
「東京では、自宅に防音の部屋があるからそこで練習していた」
「防音の部屋?」
それって贅沢。
「一日に6時間くらいは弾くから、やっぱりそれくらいはしないと」
「ろ、6時間?」
ビックリしてしまう。
「だから、そういう話はどうでもいいんだって」
「ええ?」
関口は、姿勢を正して話を仕切りなおす。
「おれがこっちに住むために発生する問題は二つ。練習場所の確保と、生活をしていく資金だ」
偉そうに言われても困る。
蒼は、まごまごして座っていた。
練習場所の件は分かった。
だけど、資金って?
お金持ちじゃないのかな?
「田舎の梅沢で練習場所を確保するのは、至難の業だ……と思っていたんだけどね。今日、高校時代の恩師、つまり今の市民オケの指揮者である柴田先生が練習場所を提供してくれるってことになったんだ」
柴田。
事務所にも遊びに来る彼の顔を思い浮かべる。
そうか。
柴田の生徒だったとか、話していたことを思い出す。
「柴田先生の家で練習室があるの?」
「うん。先生は現役の高校教師だし。日中は誰も使わないから貸してくれるって」
「それはよかったじゃない!」
最初は、ぶうぶう膨れていたのに。
いつの間にか、食事をする手は止まり、関口の話を一生懸命に聞いている。
「でも資金は?」
「そこなんだよね」
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