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07 決意の休日5
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「ぶははは!」
関口は、思わず吹き出した。
「へ?な、なに?」
「いや。おかしいよな。おれたち。お互いのフルネームも知らないで一緒に住んでいるって」
それはそうだ。
年齢だってよく分からない。
誕生日だって。
家族構成だって知らないし。
携帯の番号だって知らない。
蒼も思わず笑ってしまう。
「本当だ」
「普通だったらこんなに相手のことを知らない状態で、一緒に住むってありえないよな」
「ありえないよ」
おかしな話だった。
「関口はけい?けいってどんな字?」
「土ふたつだよ」
「ふうん」
「蒼は熊谷だもんな」
「そうそう!熊谷」
「なんで蒼って名前なんだろう?」
そう聞かれても困る。
「う~ん。母さんが付けたからな~」
「そっか」
「そうなの」
蒼は、フォークを取り上げた。
「いただきます!」
関口でも蒼の様子を伺うときがあるらしい。
じっと見られている感じに笑ってしまった。
顔を上げると「どう?どう?」と嬉しそうに見ている。
「おいしい」
「本当?よかった」
素直に喜んでいる関口を見ると少しほっとした。
彼も蒼の反応に満足したのか、自分も食べ始める。
「どこで覚えたの?実家にずっといたんでしょ」
「大学の頃に海外に留学していたんだ。その時に一人で暮らしていたから。ある程度はなんでも作れる」
「留学?そっか……」
蒼は、感心する。
そうだった。
忘れがちだが、彼はヴァイオリン弾きなのだ。
聞いたことがないから、彼がどんなに素晴らしい人なのかは分からないけど。
留学していたなんて、蒼には未知なる世界だった。
「これからは、おれも家事を分担するから。蒼が遅番の時とかさ。金曜日は、明星の練習で東京に行くから、いつ帰れるか分からない。そういうときは無理だけどさ」
「え。……うん」
「やっぱ、分担は大切だな」
勝手に一人で納得している彼。
そんな関口を見ていて、少しほっとした。
これからの話が出たってことは、この生活はまだ続くと言うことだ。
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