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11 口づけ1
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息がつけなかった。
「はあ。はあ……」
呼吸ってどうするんだっけ……?
ナースコールに手を伸ばすが苦しくて、なかなか掴めない。
咳が出る。
息が吐けなかった。
「熊谷さん、大丈夫?」
酷い呼吸の音で、廊下を巡視中の看護師が気付いて入ってきた。
暖かい看護師の手の温もりに少しほっとした。
瞳を閉じる。
「発作が起きてしまったのね」
年配の看護師にとっては大して気を動転させてしまうことではないらしい。
落ち着いた態度で点滴を早める。
「今お薬入れますからね」
声も出ないから、ただ頷く。
自分は死ぬのではないか?
発作のときはいつもそう思うのだ。
このまま息が吐けなくなって死んでしまうのではないかと。
布団の上に丸まって息を吐いている蒼の背中を優しく擦ってくれる手。
暖かくて遠い昔を思い出した。
「すみ、ません……」
「いいのよ。すぐよくなるからね。吸入も持ってきますから。楽な格好でいてちょうだい」
看護師は側にあった枕を二つ重ねて蒼の懐に押し込む。
枕を抱えるような姿勢で上体を起こすと少し楽になった。
「もう少しの辛抱よ。頑張って」
ちらちらと関口の顔が浮かぶ。
どうしているだろうか?
やっぱりこんな醜態を彼に見せるわけにもいかなかったし入院してよかった。
そう思った。
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